リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

ポリファーマシーもろもろ-5【これまでのまとめと今考えていること】

【これまでのまとめと今考えていること】
4回に分けてポリファーマシー(私としては、ポリファーマシー=「潜在的に不適切な薬剤の処方を含む可能性のある処方」と解釈している)に関する文献をみてきたが、大変悩ましい問題のように感じた。今回紹介してきた様々な指標を使えば、大枠を捉えることはできそうである。しかし詳細についてはそれでは分からない。様々な指標を使って大枠で捉えながら、それでは捉えることのできない細かい部分は、しっかりと1人1人の患者さんと向き合ってこの問題に取り組んでいく必要があると考える。

私は病院薬剤師として、入院患者を中心にこの問題に積極的に取り組んでいるつもりであるが、おそらくこれはごく一部でしかなくて。その多くは外来患者に存在するなのではなかろうか。確かに入院中の方が介入しやすいかもしれない。でもそんなことを言っていてはいけない。ポリファーマシーが原因となって入院することも多くある。そう、入院してからでは遅いのである。入院前に介入しないといけない。だから、この問題にメインで取り組むべきは薬局薬剤師なのではないかと私は思う。
手段はやはりトレーシングレポート(のようなもの)がいいのではなかろうか。常々言っているのだが、薬局薬剤師の一番の武器はトレーシングレポートだと思う。患者から得た情報、薬剤師として考えたこと、何でもいいと思う。ちょっとしたことでもいいと思う。今回のこと以外にも、是非積極的に情報提供して欲しい。薬局でしか得られない情報が沢山あることは知っているので、是非それをフィードバックして、処方に活かしてほしいと思う。

なぜこんなことを言うかというと、自分の薬局薬剤師時代を振り返って最も後悔していることだからである。もっと情報をフィードバックして医師と情報の共有やディスカッションをすればよかったな、と。病院に来て医師と沢山話をするようになって、悩みながら処方していることや患者さんのことにしろ薬のことにしろ意外と知らないことが沢山あることを知ったので。ガイドラインや今まで紹介してきた指標、患者さんからの相談内容、文献情報、直観、経験等々。それらの情報と医師の相性もあると思うし。処方への介入方法(今さらですが、介入という言葉は好きではないのですが…)はなんでもいいと思うし、まずはやってみて、さらによい提案ができるように試行錯誤すればいいのかな、と。えらそうなことを言ってきたが、まだまだ模索中で。。。

最後に、私のポリファーマシーへのスタンスを表すのにピッタリの言葉を見つけたので紹介する。
「Polypharmacy is a useful ‘flag’ for increased risk and a cue for medicines review.」
(ポリファーマシーはリスク上昇を示す有用な’旗’であり、薬剤の再吟味の合図となる。)
Anticipating the risks of polypharmacy (http://www.nps.org.au/topics/ages-life-stages/for-individuals/older-people-and-medicines/for-health-professionals/polypharmacy)より

最近処方を見るときはできるだけポリファーマシーを意識するようにしていて、その処方の妥当性を検討するようにしている。まさに’旗’であり、’合図’となっている。そしてそれを調べていると、意外と根拠があって驚くこともしばしばある(大変失礼な話ではあるが)。でもそれはそれで勉強になるので、大変ありがたいことでもある。ただ、安易に薬剤を中止したら失敗することもあるので注意。最近はβブロッカーと抗うつ薬で失敗例が…。やっぱり意味あったんだ、と。

実際に介入してみて良かったのか悪かったのかっていうのはよく分からないし、目的は薬剤費の削減なのか、患者QOLの向上なのか、薬剤有害事象の減少なのか、ハードエンドポイントの改善なのか、よく分からないし(その時々によって違うけど)。まあでもそうやってよく分からないことを分からないなりに考えて実行し続けることが重要なのかなと。

まだまだ書きたいことはたくさんあるが、だらだらしそうなのでこの辺で。
とりとめのないない文章になったが、言いたいことは伝わったかな?また機会があれば。