リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

CDI治療もろもろ-4【酸分泌抑制薬のCDI再発リスク】

前回は酸分泌抑制薬とCDI(クロストリジウムディフィシル感染症)の発症(初発+再発)のリスクについてみていきましたが、今回はCDI再発に限定した酸分泌抑制薬のリスクについての文献を2報みていきたいと思います。

 

まずは今年報告されたメタ解析から。アブストラクトしか読めていません。

Association of Gastric Acid Suppression With Recurrent Clostridium difficile Infection: A Systematic Review and Meta-analysis.

(胃酸抑制とCDI再発との関連:システマテックレビュー&メタ解析)

JAMA Intern Med. 2017 Jun 1;177(6):784-791.

PMID:28346595

 

P:CDIの既往患者7,703人

E:酸分泌抑制薬使用

C:酸分泌抑制薬非使用

O:再発リスク

 

デザイン:メタ解析(16の観察研究)

 

【結果】

1次アウトカム(CDI再発リスク)

E群 vs C群:22.1%(892人/4038人) vs 17.3%(633人/3665人) (OR 1.52;95%CI:1.20-1.94),I²=64%

(年齢、潜在的な交絡因子によって調整されたサブ解析:OR 1.38;95%CI:1.08-1.76)

 

【考察】

おそらく研究間で追跡期間、対象となった酸分泌抑制薬がPPIなのかH2RAなのか両方なのか、CDIの診断基準等が異なると思いますし、そのせいか異質性は高くなっております。観察研究のメタ解析ですので、そのあたりも割り引かないといけないと思います。

ただ、この絶対差の5%というのはかなり大きな数字のように思います(異質性の高いメタ解析なので、絶対差で語ってはいけないとは思いますが。まあでもおそらくそのくらいの差にはなるような気がします。)。H2RAとPPIの試験が混ざっているとは思いますが、おそらく前回みたようにH2RAよりはPPIの方がリスクは高いのではないかと思います。

 

 

そしてもう一つ。PPICDIの再発リスクの観察研究ですが、興味深い解析があったので紹介します。こちらは全文読めました。

Continuous Proton Pump Inhibitor Therapy and the Associated Risk of Recurrent Clostridium difficile Infection.

(PPI治療の継続とCDI再発リスクとの関連)

JAMA Intern Med. 2015 May;175(5):784-91.

PMID:25730198

 

P: 2010年1月1日から2013年1月30日までに医療関連CDIを発症し、CDIの最初の症状から最低15日生存した患者754人

E:PPIの連続使用

C:PPIの非使用

O:発症から15日~90日以内のCDI再発率

 

デザイン:後ろ向きコホート研究

2次アウトカム:15~90日以内の死亡

サブ解析:75歳以上、入院日数の1日増加、抗菌薬の再暴露によるリスクへの影響、再発日数の日数別割合

交絡因子:多変量解析がなされているが、調節した交絡因子に関する記載が見つからず…

 

【結果】

1次アウトカム(発症から15日~90日以内のCDI再発率)

E群 vs C群:28.8% vs 20.6%(HR 1.5;95%CI:1.1-2.0)

 

2次アウトカム(15~90日以内の死亡)

E群 vs C群- 10.3% vs 4.7%(P=0.007)

 

サブ解析(再発因子)

75歳以上:ハザード比(HR) 1.5;95%CI:1.1-2.0

入院日数の1日増加:HR 1.003;95%CI:1.002-1.004

抗菌薬の再暴露:HR 1.3;95%CI:0.9-1.7

 

サブ解析(再発日数)

15~21日(37例、19.2%)

22~28日(43例、22.3%)

29~35日(28例、14.5%)

36~42日(24例、12.4%)

43~49日(12例、6.2%)

50~56日(13例、6.7%)

57~90日(36例、18.7%)

 

その他、本文中にこんな記載がありました…

PPIの使用は60.7%に共通していたが、47.1%の患者しかエビデンスに基づく症状に投与されていなかった。」

 

【考察】

90日以内の再発率をプライマリアウトカムとした報告でしたが、やはりPPI群の再発率が高かったようです。死亡率に関しても大きな差が見られたことは少し驚きました。重症患者にPPIが使われやすいなどの理由はあるかもしれませんが。

で、気になったのはその他に記載したPPIの使用は60.7%に共通していたが、47.1%の患者しかエビデンスに基づく症状に投与されていなかった。」という一文。どういった基準で調べたのかは分かりませんが、PPIの不適正使用はやはり多いのですね。。。

 

【全体を通して】

CDIの再発に酸分泌抑制薬、特にPPIの寄与が示唆されております。初発時に使用されているというのは防ぐことが難しいかもしれませんが、CDI発症後に再発予防を目的としてPPIの中止やH2RAへの変更を考慮することは必要なのではないかと思います。再発、再々発で苦労する症例は時々ありますので。。。