リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

COPD治療薬もろもろ-8【アシストユース】

今回はアシストユースのついての文献を3つご紹介して、その有用性を検討していきます。

ちなみに文献は、

月刊薬事2018年9月号(Vol.60 No.12)|株式会社 じほう

の特集記事の引用文献を使用しております。

 

まずアシストユースとは、

息切れが想定される動作(起床時、労作時、運動時、入浴時など)の前や、リハビリテーション実施前に、メプチンなど効果発現の早い短時間作用性気管支拡張薬の吸入を行うこと

と定義されています。

実は恥ずかしながら、今回の特集を読んで「アシストユース」という言葉を知りました。

 

まず一つ目。

Influence of inhaled procaterol on pulmonary rehabilitation in chronic obstructive pulmonary disease.

(COPD患者の呼吸リハにおけるプロカテロール吸入の影響) 

Respir Investig. 2012 Dec;50(4):135-9.

PMID: 23199977

 

【PECO】

P:中等度から重度の安定したCOPD患者21名

E:運動前にプロカテロールを吸入する群(N=10)

C:運動前にプロカテロールを吸入しない群(N=11)

O:12週間後の6分間歩行距離(6mwd;運動耐容性を評価するため)やSt. Georgeの呼吸質問票(SGRQ)(健康関連QOL(HRQOL)を評価するため)の変化

 

デザイン:ランダム化比較試験

 

【結果】(本文よりそのまま引用)

コントロール群と比較して、プロカテロール吸入実施群は有意な6MWDとSGRQスコアの改善を示した。

 

【考察】

アブストしか読めず、おおざっぱな結果しか書いていないのでよくわからず…(ちなみに月間薬事にはグラフが出てきますので、よろしければそちらでご確認ください)

 

残り2つは日本の論文です。

慢性閉塞性肺疾患の日常生活動作の息切れと QOL に対するプロカテロールの効果

日呼吸会誌, 47(9): 772-780, 2009
 
【PECO】

P:中等症から最重症のCOPD患者で,チオトロピウムおよび他の維持薬を使用中の患者24例(うち3名が脱落;男性20名、女性1名;平均年齢72.5±7.6歳;喫煙指数 49.5±20.1 pack years(全例喫煙者);対標準 1 秒量 53.1±16.1%)(使用薬剤:チオトロピウム:21 例(100%)、サルメテロール:19例(90.5%)、テオフィリン徐放薬:13例(61.9%)、吸入ステロイド薬:5例(23.8%))

E:アシストユースとしてメプチンエアーを使用後

C:使用前

O:肺機能検査、6分間歩行試験、QOL および息切れの変化

 

デザイン:全例介入試験

アシストユースの使用回数:1症例当たり1 回2puffで1日平均2.7回(最少0.4回最大4.8回)

有害事象は認められず

 

【結果】(本文より引用します)

肺機能検査:従来治療にメプチンエアー吸入を上乗せすることによって、FVC、FEV1、およびICともにさらに有意な改善効果が得られ、24週後もその効果は維持されていた。(Fig5)

6分間歩行試験:平均で28.4±66.4mの歩行距離の延長がみられたが、有意差はなかった。

SGRQ:「症状」は8週および24週後、「活動」は4 週,8 週および24週後、「衝撃」は 24週後、「総スコア」は4 週、8週および24週後でMCID(臨床的意義のある最少の差である4ポイント)を上回る有意な改善が得られた(Fig4)

息切れ:MRC息切れスケールを用いて外来受診時に息切れの評価を行ったところ、4週後および8週後とも有意なスコア改善が得られた。(Fig6)

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(気になったので、Fig6を張りつけておきます)

 

【考察】

肺機能検査については、この差が実際にどのくらい効果的なのかがよく分かりませんが…

SGRQは一つの基準である4Ptを大きく上回っているものが多いので、それなりに効果的なのかな、と。

息切れはMRC息切れスケールが比較的改善しているように思いますので、効果がみられているように思います。(このスケールって統一されてなくて、いくつかあるんですね…)

メプチンの使用回数は多いような気がしますので、長期的な影響は不安です。

また、対象群がないので、それは割り引いて考えないといけません。

 

では3つ目を

短時間作用性β2刺激薬によるアシストユースがCOPD患者の身体活動量に及ぼす影響

日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 2017 年 27 巻 1 号 p. 48-53
 
【PECO】

P:外来通院し、GOLD分類Ⅲ以上、長時間作用型抗コリン吸入薬使用中の COPD 患者10名

E:アシストユースの使用後(4週、12週)

C:使用前

O:歩数、運動量(Kcal)、息切れ問診票(前項目)(移動動作項目)、TDI(Transitional dyspnea index)、CAT(COPD assessment test)

 

デザイン:全例介入試験

アシストユースの平均使用回数:2.9±0.7回

有害事象は認められず

 

【結果】

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※歩数、運動量、息切れ問診票(前項目)(移動動作項目)、CATにおいて、吸入前vs4週後or12週後は全てP<0.01、TDIは4週後vs12週後にてP<0.05


【考察】
こちらも対象群がないので、割り引いて考える必要がありますが。
歩数が大幅に増えているのが特に印象的ですね。ただ他の文献では出てこない項目なので、評価項目としては妥当なのか?という思いもありますが。6分間歩行試験の方が一般的な気がしますが、1,000歩以上改善しているのはすごく印象的です。
こちらでも使用回数は3回近くありますので、長期的な影響が心配ではあります。
 
【全体を通して】
規模の大きな試験がまだ行われていないようですので、評価は控えめにしないといけないかもしれませんが、効果はそれなりにあるのではないかと思います。ただ、使用回数は比較的多いと思いますので、長期的な体への影響は不安です。逆に、長期間使用することでフレイル等を防ぐことができるかもしれません。
文献の考察や他の文献等を読む限りでは、単回の使用での改善はあまりみられないけれど、継続してアシストユースをしていくことで徐々に効果がみられてくるという見解が多いように思います。
心疾患がなく、メプチンを適切に使用でき、COPDにて行動が制限されるけれども比較的元気で動きたいという要望がある場合などは使用を検討してもいいのではないかと感じました。