リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

尿路結石の排石を促進させる薬剤もろもろ-1(α遮断薬)

【症例シナリオ】

30代男性。既往歴特になし。

とある日の16時ごろ、急に右腰部への激痛を感じて救急外来を受診。エコー、CT撮影を経て「上部尿路結石」と診断された。結石の大きさは約6mmであった。

翌日からはNSAIDにて疼痛コントロール可能となったが、NSAIDの効果が切れると激痛を感じる状態であり、また突発的な痛みもあり、1日も早く排石したいという思いがある。

そこで、排石を促進させる薬剤がないかを調べることとした。

「尿路結石症診療ガイドライン 2013年版」(Minds:尿路結石症診療ガイドライン 2013年版 、PDF:http://www.urol.or.jp/info/guideline/data/03_urolithiasis_2013.pdf)には以下のような記載があった。

CQ 10 尿管結石の自然排石を促進する薬剤にはどのようものがあるか?

A.尿管結石の自然排石を期待できる薬剤には,α1 遮断薬あるいはカルシウム拮抗薬があり,10 mm 以下の結石では自然排石率が増加することが報告されている。症状がコントロールできている患者に対しては第1 選択となり得る。ただし,尿管結石排石促進としての保険適用はない。(推奨グレード:B1)

ウラジロガシエキスや漢方薬(猪苓湯)などは尿管結石排石促進作用に対してよく用いられてきたが,エビデンスレベルの高い報告はない。しかし,その効果を否定するものではない。(推奨グレード:C1)

 もう少し詳しくみていくと、

最も多くのエビデンスがあるのがα1 遮断薬であるタムスロシン(0.4 mg)であり,メタアナリシスでもタムスロシン内服群において,10 mm 以下の結石の自然排石率が有意に高く(RR:1.54,54% vs 83%),排石までの時間も有意に短縮された(9.5 日vs 6.1 日)。また,タムスロシンはカルシウム拮抗薬であるニフェジピンとの比較試験においても,同等かそれ以上の有効性が示されている。さらに,ESWL 後の排石促進効果をみたメタアナリシスにおいても,タムスロシン群はコントロール群に比較して,15〜20%の排石促進効果を認めた。

 との記載があった。

そのまま鵜呑みにしてもよかったのではあるが、ガイドラインが2013年版とやや古いので、最新の論文を検索して読んでみることとした。

 

という私のほぼ実症例です(笑)

 いやー、本当に痛かったです。。。この闘病記についてはいつかブログで。

 

てことで今回は尿路結石へのα遮断薬の効果をみた文献を3つ紹介します。

まずは、コクランレビューから。(アブストラクトのみ)

Alpha-blockers as medical expulsive therapy for ureteral stones.

(結石排石促進療法としてのα遮断薬) 

Cochrane Database Syst Rev. 2018 Apr 5;4:CD008509.

PMID: 29620795

 
【PECO】

P:尿路結石患者

E: α遮断薬服用

C:標準療法

O:排石率

 

デザイン:67件のRCTのメタ解析

副次的アウトカムおよびサブ解析:有害事象、排石時間、ジクロフェナクの使用、入院、外科介入の必要性、石の大きさ別の有効性

評価者バイアス:2人の評価者が独立して抽出している

出版バイアス:言語の制限およびFunnel Plotの使用はアブストラクトに記載がなく不明。CENTRAL, MEDLINE Ovid, Embaseを検索し、非公開のものや現在進行中のものまで調べている。著者と連絡を取っている。

元論文バイアス:RCTのメタ解析。ITTかどうかは不明

異質性バイアス:ブロモグラムのばらつきについては記載がないため不明。I²はアブストには記載してないものが多く、評価が難しい。

 

【結果】

主要アウトカム

・排石率:リスク比(RR) 1.45(95%CI:1.36-1.55;低い質のエビデンス)

※質の高いサブセット:RR 1.16(95%CI:1.07〜1.25;中程度の質のエビデンス)、1000患者当たり116人多い(95%CI:51-182)。

 

副次的アウトカムおよびサブ解析

・主要な有害事象:RR 1.25(95%CI:0.80〜1.96;低い質のエビデンス)

※質の高いサブセット:RR 2.09(95%CI:1.13-3.86)、1000患者当たり29件多い(95%CI:3-75)。

・排石時間:平均差(MD) -3.40日(95%CI:-4.17 to -2.63;低い質のエビデンス)

・ジクロフェナクの使用:MD -82.41回(95%CI:-122.51 to -42.31;低い質のエビデンス)

・入院:1000患者当たり69人(95%CI:93-32)の減少

・外科介入の必要性:RR 0.74,(95%CI:0.53-1.02;低い質のエビデンス)、1000人当たり28人の減少(95%CI:51-2)。

・結石の大きさ別

5mm以下:RR 1.06 (95%CI:0.98-1.15; I² = 62%)

5mm以上:RR 1.45 (95%CI:1.22 to 1.72; I² = 59%)

※石の位置やα遮断薬の種類では差はなかったよう

 

【考察】

多くの項目でα遮断薬に有利な結果となっており、α遮断薬の使用はある程度の効果が見込めそうな感じです。ジクロフェナクの使用はかなりインパクトがありますし、イコール疼痛(発作?)の回数が少ないということだと思いますので、メリットは大きそうです。結石の大きさによって効果が異なるかもしれないのは興味深いところです。

ただ、アブストラクトだけだとわからないことも多いので、同じようなメタ解析でフリーで読めるものがBMJにありましたので、今度はそちらを見ていきます。

 

Alpha blockers for treatment of ureteric stones: systematic review and meta-analysis.

(尿路結石に対するα遮断薬での治療)

BMJ. 2016 Dec 1;355:i6112.

PMID: 27908918

 

【PECO】

P:尿路結石患者

E: α遮断薬服用

C:プラセボまたはコントロール

O:排石率

 

デザイン:55件のRCTのメタ解析

副次的アウトカム:排石時間、疼痛エピソードの数、手術実施、入院、有害事象の割合

評価者バイアス:2人が独立して抽出している

出版バイアス:言語の制限はなし。Funnel plotはまずまず

元論文バイアス:RCTのメタ解析。ITTかどうかは不明

異質性バイアス:ブロモグラムはまずまず。結石の大小の解析では、試験間で大小の境界の大きさが異なり、その「大」「小」で解析をしているためごちゃ混ぜになっている。I²は小さくはない。ベースラインの排石率にばらつきあり

 

【補足事項】

・(31の研究の)平均年齢:治療群 40.7歳(SD 6.9)、コントロール群 40.4歳(SD 6.1)、女性 0~59.6%

・(41の研究の)結石の大きさ:治療群 5.7mm(SD 1.2)、コントロール群 5.7mm(SD 1.1)

・α遮断薬の種類:タムスロシン(40件)、アルフゾシン(6件)、ドキサゾシン(4件)、ナフトピジル(3件)、シロドシン(6件)、テラゾシン(4件)

・追跡期間:28日(37件)、その他は7~42日のいずれか

 ・Limitation:全体的に試験方法にばらつきが多く、異質性が高い。薬剤間の差はなかったが、試験数が少ない薬剤があり、検出力不足の可能性がある。より小さな規模の試験を組み入れることができていない可能性がある。

 

【結果】

主要アウトカム

・排石率:リスク比(RR)1.49(95%CI:1.39-1.61;I²=60.2%;55研究;5,990人)

※28日の解析のみでの排石率:75.8%(95%CI:71.4%-80.0%) vs 48.2%(95%CI: 42.0%-54.4%)→27.6%の差;NNT=4

※結石の大小の解析では、試験間で大小の境界の大きさが異なり、その「大」「小」で解析をしているためごちゃ混ぜになっており、参考とせず。

 

副次的アウトカム

・排石時間:平均差 −3.79日(95%CI: −4.45 to −3.14; I2=74%;24試験;2,862人;中等度の質のエビデンス)。(重みづけなしにて排石までの日数は 8.8日 vs 13.3日)

・疼痛エピソードの数:平均差 −0.74回(95%CI:−1.28 to −0.21;I2=94%;13研究;1,235人;低い質のエビデンス)

・手術実施:RR 0.44(95%CI:0.37-0.52;I2=39%;32研究;3,758人;中等度の質のエビデンス)

・入院: RR 0.37(95%CI:0.22-0.64; I2=39%;8試験;1,007人;中等度の質のエビデンス

・有害事象の割合:試験間でのばらつきがあったようで、参考にならず…

※α遮断薬の薬剤間での差はなし

 

【考察】

コクランより2年古いものになりますが、似たような結果になっていたかと思います。

新たな発見として大きいのは、排石率におけるα遮断薬使用のNNTが4ということですね。これは是非とも使いたい!!

 

さて、ここまでみてきたのは異質性が比較的高かったので、タムスロシンのプラセボ対象2重盲検RCTのみを集めたというメタ解析を。

Effect of Tamsulosin on Stone Passage for Ureteral Stones: A Systematic Review and Meta-analysis. 

(尿路結石の排石へのタムスロシンの効果)

Ann Emerg Med. 2017 Mar;69(3):353-361.e3.

PMID: 27616037

 
【PECO】

P:8つのRCTに含まれた1,384人

E:タムスロシン群

C:プラセボ群

O:排石率、有害事象

 

デザイン:2重盲検プラセボ対象RCTのメタ解析

試験期間:21日(1試験)、28日(6試験)、42日(1試験)

評価者バイアス:2人の評価者が独立して抽出している

出版バイアス:言語の制限はなし。Funnel Plotの使用あり。 MEDLINE, EMBASE, CENTRAL databasesを検索→少ない??

元論文バイアス:RCTのメタ解析。ITTかどうかは不明

異質性バイアス:ブロモグラムの一致は全体としてはイマイチだが、大きさ別では概ね一致している。I²はやや大きい。

Limitation:8研究中7研究は遠位尿細管のみを登録。10mm以上は含まれない。有害事象としてのめまいに関しては異質性が高い。

 

【結果】

主要アウトカム

・排石率

E群 vs C群:85% vs 66%(リスク差 17%;95%CI:6-27%,I²=80.2%)NNT=6

 

サブ解析(結石の大きさ別の排石率)

・大きな石(5~10mm):リスク差 22%(95%CI:12%-33%,I²=33.1%,6試験,n=514)NNT=5

・小さな石(4~5mm未満):リスク差 –0.03%(95%CI:–3.9%-3.3%, I²=0%,4試験,n=533)

 

有害事象

・めまい:リスク差 0.2%(95%CI;–2.1%-2.5%,I²=67.8%,8試験)

・起立性低血圧:リスク差 0.1% (95%CI;–0.4%-0.5%,8試験)

 

【考察】

BMJのメタ解析で含まれていたタムスロシンの研究が40件だったことを考えると、今回のメタ解析は8件しか含んでいないので、少なすぎる気もしますが…

やはりNNTはかなり少ない数字に。これを考えると有効な気がしますね。

また結石の大きさ別では大きいもののみに効果があったという結果に。小さいものはタムスロシン服用しなくても十分に排石される、ということじゃないかと思っております。

有害事象に関しては、どの文献を読んでもよくわからないですね。α遮断薬なので、起立性低血圧には十分に注意すべきだと思います。

 

【全体を通して】

α遮断薬は十分に効果が期待できそうな気がします。NNTはかなり少ないですし、痛みから早く開放するというのは非常に重要なことだと思います。副作用リスクはそれほど大きな薬剤ではないですし。

 

【症例に対しての適応は?】

今回の症例の結石の大きさは6mmということで適応しそうですが、部位が上部ということで、「近位」になりますので、最後の文献の「遠位」とは異なります。まあでも有害事象のリスクはさほど高くないと思いますので、使ってもいいのかな、と思います。

というより、使いたいです!自分の症例だと若干甘くなってしまいますね。どうしても積極的な治療を選びたくなるような気がします。ほんとに辛くて早く解放されたいですし、、、それが理解できたのも良かったです。

 

次回は、同様にガイドラインに載っているCa拮抗薬についてみていきたいと思います。