リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

COPD治療薬もろもろ-2【トリプルセラピー】

先日改訂されたGOLDのグレードDにおけるLABA/LAMAへのICSの追加について考えてみたく、ガイドラインの引用文献より文献を検索しました。でも、あまりいいのがなかったです。。。

 

文献155

Tiotropium in combination with placebo, salmeterol, or fluticasone-salmeterol for treatment of chronic obstructive pulmonary disease: a randomized trial.

(COPD治療におけるチオトロピウムとプラセボ、サルメテロール、フルチカゾン/サルメテロールの併用)

Ann Intern Med. 2007 Apr 17;146(8):545-55. Epub 2007 Feb 19.

PMID:17310045

 

P:中等度から重度のCOPD患者(GOLDのグレード分類の記載はなし)

E:チオトロピウム(TIO)+サルメテロール(SAL)またはフルチカゾン(HUL)/SAL

C:TIO+プラセボ

O:全身性ステロイドや抗菌薬による治療を必要としたCOPDの増悪を経験した患者の割合

 

デザイン:無作為化二重盲検プラセボ比較試験、ITT解析

2次アウトカム

 ・1年1患者あたりの増悪回数の平均

 ・医療従事者の緊急訪問や救急受診につながる増悪総数

 ・COPDによる入院数

 ・全ての原因における入院総数

 ・生活に関連したQOLの変化(SGRQスコア)

 ・呼吸困難の変化(呼吸困難指数(Transitional Dyspnea Index)を使用)

 ・肺機能の変化(FV1)

脱落率:合計39%( TIO+プラセボ群:47.4%、TIO+SAL群:43.2%、TIO+SAL/HUL群:25.5%)

 

結果

1次アウトカム(全身性ステロイドや抗菌薬による治療を必要としたCOPDの増悪を経験した患者の割合)

 ・TIO+プラセボ群:62.8%、TIO+SAL群:64.8%(相対差-2.0%、95% CI(-12.8)-8.8%)、TIO+FLU/SAL群:60.0%(相対差2.8 %、95%CI(-8.2)-13.8%)

  ・(感度分析②) TIO+プラセボ群:71.8%、TIO+SAL群:70.3%(相対差1.5%、95% CI(-8.7)-11.7%)、TIO+FLU/SAL群:64.1%(相対差7.6 %、95%CI(-2.9)-18.1%)

2次アウトカム

 ・初回の増悪までの平均日数:TIO+プラセボ群 130日、TIO+SAL群128日、TIO+FLU/SAL群 217日,RR 0.80 (95%CI:0.60-1.08)

 ・1年1患者あたりの増悪回数の平均:vs TIO+SAL群 RR 1.09 (95%CI:0.84-1.40)、vs TIO+FLU/SAL群RR 0.85 (95%CI:0.65-1.11)

 ・医療従事者の緊急訪問や救急受診につながる増悪総数:vs TIO+SAL群 RR 1.06 (95%CI:0.87-1.30)、vs TIO+FLU/SAL群RR 0.81 (95%CI:0.65-1.01)

 ・COPDによる入院数:vs TIO+SAL群 RR 0.83 (95%CI:0.54-1.27)、vs TIO+FLU/SAL群RR 0.53 (95%CI:0.33-0.88)

 ・全ての原因による入院総数:vs TIO+SAL群 RR 0.83 (95%CI:0.57-1.21)、vs TIO+FLU/SAL群RR 0.67 (95%CI:0.45-0.99)

 ・生活に関連したQOLの変化(SGRQスコア):TIO+プラセボ群 -4.5Pt、TIO+SAL群-6.3Pt(P=0.02)、TIO+FLU/SAL群MD -8.6Pt(P=0.01)

 ・呼吸困難の変化(呼吸困難指数(Transitional Dyspnea Index)を使用):TIO+プラセボ群 1.78(SD 4.08)、TIO+SAL群 1.40(SD3.96、P=0.35)、TIO+FLU/SAL群 1.84(SD3.86、P=0.38)

 ・肺機能の変化(気管支拡張薬投与前のFV1):TIO+プラセボ群 0.027L、TIO+FLU/SAL群 0.086L(P=0.049) ※vs TIO+SAL群は記載なし

 

結果

TIO+SAL群vs TIO+FLU/SAL群の結果を知りたかったのですが、直接のその比較については検討されておりませんでした。ただ、TIO+プラセボ群vs TIO+SAL群で有意差がなく、vs TIO+FLU/SAL群で有意差のあったものがあったので、それなりに効果はあるのかなと推測します。TIO+プラセボ群vs TIO+SAL群で差が出るべきとも考えますが。ただ、脱落が多いのがこの文献の大きな問題点ですね。

初回増悪までの日数はTIO+プラセボ群vs TIO+FLU/SAL群で有意差こそありませんでしたが、128日→217日へと大幅に増加しており、それなりに有効なのではと感じます。Figを見る限り、TIO+FLU/SAL群は試験の後半にかけて増悪例が増えたようです。

 

次もトリプルセラピーですが、トリプルセラピーからICSを休薬したらどうなるのかという文献を。

文献147

Withdrawal of inhaled glucocorticoids and exacerbations of COPD.

(ICS休薬とCOPDの増悪)

N Engl J Med. 2014 Oct 2;371(14):1285-94.

PMID:25196117

 

P:COPD増悪の既往のある患者2,485人(GOLDのグレードC:61.2%、グレードD:38.1%、その他:0.7%)

E:チオトロピウム(18μgを1日1回),サルメテロー ル(50μgを1日2回)(12週かけてフルチカゾンを離脱)

C:チオトロピウム(18μgを1日1回),サルメテロー ル(50μgを1日2回),吸入ステロイドであるフルチカゾ ン(500μgを1日2回)

O:中等度または重度のCOPDの初回増悪までの期間

 

デザイン:ランダム化二重盲検並行群間比較試験、mITT解析

1次アウトカム:Oに記載

2次アウトカム:肺機能検査所見、健康状態、呼吸困難

脱落率:18.4%(E群:18.6%、C群:18.3%)

 

結果

1次アウトカム(中等度または重度のCOPDの初回増悪までの期間)

・ハザード比(HR)1.06(95%CI:0.94-1.19)

2次アウトカム

 ・肺機能検査所見(トラフFEV1):18週 C群との差 -38mL(P<0.001)、52週 C群との差-43mL(P=0.001)

 ・健康状態(SGRQスコアのベースラインとの差):27週 E群:0.55P t、C群:-0.42Pt(P=0.08)、52週 E群:1.15Pt、C群:-0.07Pt(P=0.047)

 ・呼吸困難:18週 E群:-0.001Pt、C群:-0.030Pt(P=0.36)、52週 E群:0.035Pt、C群:-0.028Pt(P=0.06)

 ・有害事象関連

   総死亡:E群 3.2%、C群 2.7%

   入院:E群 21.8%、C群 22.0%

   肺炎:E群 5.5%、C群 5.8%

 

感想

肺機能検査所見のみ差があったが、増悪までの期間や有害事象に差は見られず。必ずしもICSが必要ではないことを示しているとは思いますし、今回は差がありませんでしたが、ICSがあることで有害事象の可能性も出てきますので、それも考慮しないといけないと思います。ただ、肺機能検査所見が悪くなっているので、そのあたりの経過観察は必要なのではないかと思います。

あと注意しないといけないのは喘息との合併例(いわゆるACOS)かと思います。この判断は薬剤師には難しいので、ステロイド中止の提案はなかなかの難関のように思います。

 

トリプルセラピーについては更なる研究が必要だと思いますし、今後進んでいくのではないかと思います。