CDI(クロストリジウムディフィシル感染症)の治療薬について。
そういえば、Clostridium difficileは2016年にClostridioides difficileに名称が変わったとどなたかがおっしゃっていましたね。ソースはこちらのようです。
文献の前に先にガイドラインを紹介しておきます。日本はこちらかな(JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―腸管感染症―)。海外のはこちらが有名なのかな(クロストリジウム・ディフィシル感染症のためのSHEA/ IDSAガイドライン)。
今回はメトロニダゾール(MNZ)とバンコマイシン(VCM)の治療効果などの比較についての文献を2つ。
Efficacy and Safety of Metronidazole Monotherapy versus Vancomycin Monotherapy or Combination Therapy in Patients with Clostridium difficile Infection: A Systematic Review and Meta-Analysis.
(CDI患者におけるMNZ単独治療 vs VCM単独治療または併用治療の有効性と安全性:システマテックレビュー&メタ解析)
PLoS One. 2015 Oct 7;10(10):e0137252.
PMID:26444424
P:MNZおよびVCMにて治療されたCDI患者2,501人
E:MNZ単独治療
C:①VCM単独治療、②MNZ&VCM併用治療
O:効果と安全性
デザイン:メタ解析
元論文バイアス: The extracted data (and specifically, the rates of clinical cure and CDI recurrence) were analyzed based on the intention-to-treat population.との記載あり。RCT又は症例対象研究が抽出されている。
評価者バイアス:2人の調査者が独立して抽出を行った。
出版バイアス:英語と中国語のみ。Funnel plotあり(supporting informationに)。
異質性バイアス:ブロボグラムはまずまず一致しているが、組み込まれた試験が少ない印象。I²は小さい。
【結果】
1次アウトカム(MNZ vs VCM(治癒率))
軽症:OR 0.67,95%CI:0.45-1.00,I²=0%,5研究,703人
重症:OR 0.46,95%CI:0.26-0.80,I²=0%,4研究,324人
単独vs併用:OR 1.07,95%CI:0.58-1.96,I²=0%,4研究,190人
1次アウトカム(MNZ vs VCM(再発率))
軽症:OR 0.99,95%CI:0.40-2.45,I²=6%,4研究,276人
重症:OR 0.98,95%CI:0.63-1.53,I²=0%,4研究,430人
単独 vs 併用:OR 0.91,95%CI:0.66-1.26,I²=0%,8研究,804人
有害事象
MNZ vs VCM(軽症&重症):OR 1.18,95%CI:0.80-1.74,I²=0%,7研究,1330人
単独 vs 併用:11.1%vs46.9%(OR 0.30,95%CI:0.17-0.51,I²=0%,3研究,439人
【考察】
やや試験数が少ない印象ですが、異質性は低く、信頼性はありそう。
治療効果はVCMの方が良さそう。でも全例に使う訳にはいかないので、その辺はよく考えて使わないといけません。再発率が薬剤や重症度で変わらなかったのは意外。
有害事象はVCMよりもMNZの方が多いような気もしますが…これは最後の感想で。
2つ目(フリーで読めないのですが、なぜか読めてしまったので。。。)
Comparative Effectiveness of Vancomycin and Metronidazole for the Prevention of Recurrence and Death in Patients With Clostridium difficile Infection.
(CDI患者の再発予防および死亡におけるVCMおよびMNZの効果の比較)
JAMA Intern Med. 2017 Apr 1;177(4):546-553.
PMID:28166328
P:CDIを発症した合計47,471人(平均年齢(SD):68.8(13.3)、1,947人の女性(4.1%)、45,524人の男性(95.9%))(he US Department of Veterans Affairs health care systemを使用)
E:MNZ治療群
C:VCM治療群
O:最初の診断から8w以内の再発率、30日以内の死亡率
デザイン:後ろ向きコホート研究
追跡期間:8週間
傾向スコアマッチは?:されている。1:4くらい。year of diagnosis, diagnosis in the intensive care unit, Charlson Comorbidity Index–Elixhauser score, number of hospitalizations in the past year, age, diagnosis in a health care facility, incident vs recurrent episode, antibiotics at diagnosis, sepsis within the past 7 days, and proton pump inhibitors, chemotherapy, or immunosuppressive medications in the past 30 days.(日本語に訳すといろいろ怪しいので。。。)。これに加えて重症度でも調整されているよう。
【結果】
1次アウトカム最初の診断から8w以内の再発率、30日以内の死亡率)
↓ Fig2.重症度及び薬剤別の再発、30日以内の死亡割合
【考察】
こちらでも再発率は重症度や薬剤では変わらない結果。一方、30日以内の死亡率では重症にてVCM群にて有意に死亡率が低下する結果に。重症例ではVCMを使用を考慮したほうがよさそう。
【全体を通して】
ざっくりと、軽症にはMNZ、重症にはVCMを使えばいいかなという印象です(ガイドラインに従えばいいのかなと)。特に失敗したくないときはVCMを積極的に使ったほしいと思います。実際に、MNZで効かずにVCMが効いたという症例も多くありますので。耐性も不安ですが、今のところ大丈夫そうなので…
あと、有害事象の発現頻度は同等との結果でしたが、MNZの方が多い気がしますけどね…重篤な有害事象も存在しますので。脳症とかね。以下にまとまってます。
これもあるのであまり好きじゃないんですよね、MNZ。