リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

CDI治療もろもろ-2【フィダキソマイシンとベゾロトクスマブ】

これまでCDI(クロストリジウムディフィシル感染症)の治療薬は基本的にMNZとVCMのみでしたが、今後フィダキソマイシンとベゾロトクスマブが発売されるようです。てことで、先取りで有効性等をみていきたいと思います。現行の治療薬にてどうしても再発する例が時々ありますので(25%くらい?)楽しみにしている薬剤ではあります。

 

まずはフィダキソマイシンから。先日アステラス製薬より承認申請が出ております。(https://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/post-265.html)

 海外では発売されたばかりですので、まだまだ文献は少ないようです。まずはこちらから。

Clinical efficacy of fidaxomicin compared with vancomycin and metronidazole in Clostridium difficile infections: a meta-analysis and indirect treatment comparison.

(CDIに対するフィダキソマイシンvs VCM,MNZの臨床的効果:メタ解析および間接的治療比較)

J Antimicrob Chemother. 2014 Nov;69(11):2892-900.

PMID:25074856

 

P:CDI患者

E:フィダキソマイシン投与

C:VCMまたはMNZ

O:臨床的治癒率、再発率、持続的治癒率

※臨床的治癒:症状の改善と治療後2日目までの更なる治療不要

再発:治療後の下痢と糞便検査陽性

持続的治癒-追跡期間中の再発なし

 

デザイン:メタ解析(MNZは間接的)

2次アウトカム:重症度別(重症 or 非重症)→特に取り上げず。n数が少なく、信頼性が乏しそうなので。

追跡期間:VCMは28日、MNZはまちまち

評価者バイアス:2人の評価者が独立して行っている。

出版バイアス:英語のみ。Funnel plotはなし。使用したデータベース(PubMed, Cochrane Library, EMBASE, Medline (R) In-Process, ClinicalTrial.Gov, ClinLife, Eudract, Trip, WHO ICTRP, HTA Watch, CEA registry, grey literature)

元論文バイアス: RCTのメタ解析(VCMは2報,計1,164人、MNZは3報)。

異質性バイアス:VCM群のみですが、I²=0%。MNZ群は記載なし。ブロボグラムはまずまず。

 

【結果】

1次アウトカム(vs VCM)

臨床的治癒率:88% vs 86%(OR 1.17;95%CI:0.82-1.66,I²=0%)

再発率:13% vs 24%(OR 0.47;95%CI:0.34-0.65,I²=0%)

治癒維持率:76% vs 64%(OR 1.75;95%CI:1.35-2.27,I²=0%)

 

1次アウトカム(vs MNZ)(間接比較)

臨床的治癒率:OR 2.01;95%CI:0.99-4.10

再発率:OR 0.42;95%CI:0.18-0.96

治癒維持率:OR 2.55;95%CI:1.44-4.51

 

【考察】

抽出されたフィダキソマイシンの2報に関しては、いずれも第3相試験です。Limitationとしては、安全性の知見が不十分であること、MNZはやや古い文献があることなどが挙げられています。フィダキソマイシンはVCMに比べて治癒率は同等で、再発率を低下させるという結果。またMNZに対しては、有意差はつていないものの治癒率もかなり高い傾向があります。フィダキソマイシン群の有害事象は、元文献をみる限りではこれといって多いものはなさそうです。

 

フィダキソマイシンについては、上記文献でも対象となった第3相試験2報の再発例のみを対象とした文献がありますので、そちらも紹介しておきます。

Treatment of first recurrence of Clostridium difficile infection: fidaxomicin versus vancomycin.

(CDIの最初の再発の治療:フィダキソマイシンvs VCM)

Clin Infect Dis. 2012 Aug;55 Suppl 2:S154-61.

PMID:22752865

 

P:CDIを1回再発した患者(n=178)

E:経口フィダキソマイシン(200mg12時間ごと10日間)(n=88)

C:経口VCM(125mg6時間ごと)(n=90)

O:臨床的治癒率

 

デザイン:2つのRCTの統合

2次アウトカム:再発率

ITT解析か?:mITT解析

脱落率:28.1%

 

【結果】

1次アウトカム(臨床的治癒率)

E群 vs C群:93.7% vs 91.6%(per-protocol 解析)

 

2次アウトカム(28日以内の再発率)

E群 vs C群:20.3% vs 32.3%(p=0.08)(mITT解析)、19.7% vs 35.5%(p=0.045)(per-protocol 解析)

 

2次アウトカム(14日以内の再発率)

E群 vs C群:7.6% vs 27.4%(p=0.03)(per-protocol 解析)

 

【考察】

再発症例における再発も大幅に減少させる結果でした。特に14日以内の再発を抑えるようです。ただ、それでも20%は再々発してしまうという…

脱落率が大きいのが気になるところですが、治療後の再発を追跡しているため仕方ないか?

 

次はベゾロトクスマブについて。何回唱えても覚えられないこの名前…まもなくMSDより「ジーンプラバ点滴静注625mg」という名称で発売される予定です。

添付文書→

http://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/170050_63994A0A1021_1_02

IF→

http://www.info.pmda.go.jp/go/interview/1/170050_63994A0A1021_1_001_1F

この薬剤はMNZ,VCM,フィダキソマイシンとは違って、別でそれらによる標準治療を必要とする薬剤です。使用法は、その標準治療中に1回静注するというもののようです。効能・効果は「クロストリジウム・ディフィシル感染症の再発抑制」です。

ここでは第3相試験の「MODITYⅠ試験」および「MODIFYⅡ試験」の統合した解析を取り上げます。

ベゾロトクスマブはCDトキシンBのモノクローナル抗体なのですが、アクトクスマブというトキシンAのモノクローナル抗体も同時に開発されております。が、MODITYⅠ試験にて効果が不十分のため、続くMODIFYⅡ試験ではアクトクスマブ単剤群がなくなりました。

前知識はこの辺で。

Bezlotoxumab for Prevention of Recurrent Clostridium difficile Infection.

(再発性CDI予防のベズロトクスマブ)

N Engl J Med. 2017 Jan 26;376(4):305-317.

PMID:28121498

日本語訳→

Clostridium difficile 感染症の再発予防のためのベズロトクスマブ | 日本語アブストラクト | The New England Journal of Medicine(日本国内版)

(ジーンプラバ®のIFにも詳しく載っています。)

 

P:CDI初発又は再発の患者で、標準治療(MNZ or VCM or フィダキソマイシン)を受けている患者2,655人

E:ベズロトクスマブ単剤(10 mg/kg) 、アクトクスマブ単剤(10 mg/kg) 、アクトクスマブ+ベズロトクスマブ(それぞれ 10 mg/kg)(※アクトクスマブ単剤はMODIFY Ⅰ試験にて効果不十分と確認されたため、 MODIFY Ⅱ試験では割り付けされなかった。)

C:プラセボ投与

O:点滴静注後 12 週間以内に再発した感染(最初の臨床的治癒後はじめての発生)

 

デザイン:二重盲検無作為化プラセボ対照試験

2次アウトカム:最初の治療おける臨床的治癒。12週間の治癒の維持

ITT解析は?:mITT解析

脱落率は?:96/2,655(3.6%)

 

【結果】

※「ベズロトクスマブ単剤 vs プラセボ」のみ取り上げます。(アクトクスマブ+ベズロトクスマブ群では、アクトクスマブの追加効果が認められませんでした。)

1次アウトカム(再発率)

・ベズロトクスマブ単剤 vs プラセボ

16.6%(129/781) vs 26.6%(206/773)、補正後の差 -10.0%;95%CI:(-14.0)-(-6.0)

 

2次アウトカム(治癒の維持)

63.5%(496/781) vs 53.7 (415/773) 、補正後の差 9.7%;95%CI:4.8-14.5

 

2次アウトカム(最初の臨床的治癒)

80.0%(625/781) vs 80.3%(621/773)、補正後の差 -0.3%;95%CI:(-4.3)-3.7

 

2次アウトカム(最初の臨床的治癒→再発)

20.6%(129/625) vs 33.2%(206/621)、補正後の差 -12.2%;95%CI:(-17.1)-(-7.4)

 

サブ解析(ジーンプラバ®の添付文書からコピーしてきました。)

f:id:gacharinco:20171022151530p:plain

有害事象:これといって多いものはなし。

 

【考察】

再発を2/3くらいに抑えるイメージですかね。

サブ解析を見てのとおり、リスク因子のある群ではプラセボとの差がみられましたが、リスク因子なし群では差がみられませんでした。

そういったあたりの適正使用の必要はありそうです。

 

【全体を通して】

今後発売される予定のフィダキソマイシンとベゾロトクスマブについて書いていきましたが、両剤とも再発抑制の効果は現在使用されている薬剤よりも高そうです。ただ、まだガイドラインに載っておりませんし、どの患者に使うのかということがポイントになりそうです。おそらく薬価はかなり高くなるような気がしますし…

これらの薬剤を使っても再発するケースは十分にあるようですので、基本となる抗菌薬の適正使用、環境整備等々が重要ということは言うまでもありませんね。

また発売されたり等々ありましたら更新したいと思います。

 

【2017.12 追記】

ベゾロトクスマブ(ジーンプラバ®点滴静注625mg)が発売となりました。薬価は、330,500/瓶。高い!!!使い時は十分に考えないといけません。何度も言いますが、何より大切なのは抗菌薬の適正使用です!!