リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

ソーシャルキャピタルと健康もろもろ-1【スポーツ組織への所属で要介護状態への移行は予防できますか?the AGES Cohort Studyより】

ソーシャルキャピタルについての講演会でAGESプロジェクトの存在を知りまして。興味のある分野だったので、一度文献を読んでみました。

AGESプロジェクトの詳細はこちらから→

http://square.umin.ac.jp/ages/ages.html

現在は、JAGESプロジェクトへと発展して研究が続けられているようです。→

https://www.jages.net/

 

Participation in sports organizations and the prevention of functional disability in older Japanese: the AGES Cohort Study.

(日本人高齢者におけるスポーツ組織への参加と機能障害要介護認定予防:the AGES Cohort Study)

PLoS One. 2012;7(11):e51061.

PMID: 23226458

 

【PECO】

P: 65歳以上の障害を持たない日本人29,374人に対して自己申告のアンケートを郵送→このうち、13,310人が研究に含まれ、4年間追跡→分析に必要なすべての情報を提供した11,581人の被験者について分析

E:スポーツ組織に所属せず運動のみ(週1回以上)(EA)(2,548人、75歳以上の割合:28.8%)、スポーツ組織に所属するが消極的な参加(週1回未満)(PP)(447人、23.9%)、スポーツ組織に所属せずほとんど体を動かさない(週1回未満)(S)(6,698人、45.0%)

C:スポーツ組織に所属し積極的な参加(週1回以上)(AP)(1,888人、20.4%)

O:(要支援以上の)要介護状態への移行

 

【批判的吟味】

デザイン:前向きコホート研究

2次アウトカム:機能障害の年間発生率、運動頻度・スポーツ組織所属有無による要介護状態移行リスク

マッチング:されていない

調節された因子:結果にてアウトカムごとに記載

追跡期間:4年

Limitation:運動の種類が不明。Excise aloneが必ずしも一人で運動をしているとは限らない。対象者の40%しか解析されていない。サンプルサイズが少なく、運動頻度がおおまかにしか解析できていない。ソーシャルネットワークが「友人と会う頻度」のみだったこと。

 

【結果】

1次アウトカム(要介護状態移行リスク)

 

調節ハザード比(aHR)(95%CI)

 

Model1

Model6

AE

1.00

1.00

PA

1.29(1.02–1.64)

1.30(1.03–1.65)

PP

1.16(0.76–1.77)

1.18(0.77–1.79)

S

1.65(1.33–2.04)

1.64(1.33–2.03)

※調節因子

Model1:年齢、性別、年間所得、教育達成度、婚姻状態、職業状態、自己報告された疾患、うつ病、喫煙、アルコール消費

Model6:Model1 +情緒的サポートの受領と提供、手段的サポートの受領と提供、友人と会う頻度

 

 

2次アウトカム(年間発生率)

 

年間発生率

 

65-74歳

75歳以上

合計

AE

0.6%

7.2%

1.4%

PA

1.0%

8.9%

2.4%

PP

0.7%

7.9%

1.6%

S

1.2%

11.6%

4.7%

 

2次アウトカム(運動頻度、スポーツ組織所属有無による要介護状態移行リスク)

・週1回以上の運動vs週1回未満の運動:aHR 1.26(1.10-1.45)

・スポーツ組織所属vs非所属:aHR 1.33(1.09-1.62)

※調節因子:年齢、性別、年間所得、教育達成度、婚姻状態、職業状態、自己報告された疾患、うつ病、喫煙、アルコール消費(+運動組織参加or運動頻度)

 

【考察】

個人的にはすごく興味深い研究です。運動することはもちろんですが、人との交流も重要そうですね。

残存交絡因子はまだありそうですが…Limitationに書いてあることは全て引っかかりますね。PP群の有意差なしは検出力不足によるβエラーの可能性もあるのではないかとも思います。有意差がないのであれば、本当に「つながり」や「社会参加」が重要だということですね。

要介護状態の確認方法も気になったのですが、在宅訪問インタビューや主治医意見書を参考にしているとのことなので問題なさそうです。

このAGESプロジェクトは様々な解析がなされているので、また違う文献も読んでみようと思います。