Clostridioides(Clostridium) difficile 感染症予防に整腸剤は効果があるのか?ということで、3つの文献をピックアップしました。
まずは昨年アップデートされたコクランより。アブストラクトのみしか読めていませんので…
Probiotics for the prevention of Clostridium difficile-associated diarrhea in adults and children.
(成人及び子供におけるClostridium difficile関連下痢症(CDAD)予防の整腸剤)
Cochrane Database Syst Rev. 2017 Dec 19;12:CD006095.
PMID: 29257353
P:抗菌薬と投与された39研究(9,955人)
E:整腸剤群
C:プラセボまたは無治療群
O:CDAD発生率
デザイン:メタ解析(39RCT)
2次アウトカム:CDI発生率、有害事象の発生
評価者バイアス:2人の評価者が独立して行なった。
出版バイアス: PubMed, EMBASE, CENTRAL, the Cochrane IBD Group Specialized Register +灰色文献を検索。
元論文バイアス:RCTのメタ解析。ITTかどうかは不明…
異質性バイアス:I²は不明。
【結果】
1次アウトカム(CDADの発生率)(※CDAD=diarrhea as defined by authors + cytotoxin and culture or both)
E群 vs C群:1.5%(70/4525) vs 4.0%(164/4147)(RR 0.40;(95%CI:0.30-0.52); GRADE =中等度;31試験、8,672人) (NNTB = 42人, 95%CI:32-58)
※ベースラインのCDADのリスクが0-2%および3-5%:E群 vs C群にて差なし
ベースラインのリスクが5%<:E群 3.1% (43/1370) vs C群11.6% (126/1084)(RR 0.30,95%CI:0.21-0.42; GRADE =moderate;13試験, 2454人)(NNTB = 12; moderate certainty evidence)
※NNTB= the number needed to treat for an additional beneficial outcome
2次アウトカム(CDIの発生率)(CDI=cytotoxin and/or culture)
E群 vs C群: 15.5% (98/633) vs 17.0% (99/581) (RR 0.86,95%CI:0.67-1.10; GRADE = moderate;15試験、1214人)
2次アウトカム(有害事象)
E群 vs C群:RR 0.83,95%CI:0.71-0.97; GRADE=very low; 32試験、8305人)
【考察】
1次アウトカムにおいてデータの欠損が多かったようではありますが、かなりCDADが減少している印象です。整腸剤群の方で副作用が少ないというのはよく分かりませんが。また、ベースラインのリスクが高い群で特に有効だったようなので、高齢者等々のリスクの高い患者では積極的に使用した方がいいのかなと思います。NNTB12というのは、かなり有用な気がします。
次は同様のメタ解析ですが、もう少し色んな解析がありましたのでそちらを。
Probiotics are effective at preventing Clostridium difficile-associated diarrhea: a systematic review and meta-analysis.
(整腸剤はCD関連下痢症の予防に効果的:システマテックレビュー&メタ解析)
Int J Gen Med. 2016 Feb 22;9:27-37.
PMID:26955289
P:抗菌薬による治療患者7,957人
E:整腸剤の併用
C:整腸剤の非併用
O:CDADの発症率
デザイン:メタ解析(26のRCT)
2次アウトカム:整腸剤の種類別、成人・小児別、入院・外来別
評価者バイアス:複数人で抽出したとは記載されていない。
出版バイアス:英語のみ。 PubMed, Cochrane Central Registry of Controlled Trials, and Google Scholar(1966-2015)が調査された。Funnel plotあり。
元論文バイアス:RCTのメタ解析。ITTかどうかは不明。
異質性バイアス:ブロボグラムは問題なさそう。I²は1次アウトカムのみ算出ありで0%。
【結果】
1次アウトカム(CDAD発症率)
E群 vs C群:1.5%(62/4,124) vs 3.8%(145/3,833)(相対リスク(RR) 0.395;95%CI:0.294–0.531,I²=0%)
2次アウトカム(整腸剤別の発症率)
Lactobacillus(2,273人):RR 0.363;95%CI:0.225–0.585
Saccharomyces(1,757人):RR 0.415;95%CI:0.217–0.796
2種混合(3,927人):RR 0.418;95%CI,0.263–0.664
2次アウトカム(成人、小児別)
成人:RR 0.405;95%CI:0.294–0.556
小児:RR 0.341;95%CI:0.153–0.759
2次アウトカム(入院、外来別)
入院:RR 0.390;95%CI:0.283–0.538
外来:RR 0.306;95%CI:0.013–7.470
【考察】
CDADの予防に関しては先ほどのコクランとほとんど同じ(おそらく同じ文献を多く含んでいるでしょうから…)でした。
2次アウトカムですが、今回の解析では整腸剤による差はなさそうです。また、成人と小児でもどちらでも効果は確認されていますし、外来は症例数が少なく有意差がつかなかったのでしょう。
最後に整腸剤の投与タイミングに関する文献を。
Timely Use of Probiotics in Hospitalized Adults Prevents Clostridium difficile Infection: A Systematic Review With Meta-Regression Analysis.
(CDI予防のための入院成人への整腸剤のタイムリーな使用(メタ回帰分析を用いたシステマテックレビュー))
Gastroenterology. 2017 Jun;152(8):1889-1900.e9.
PMID:28192108
P:抗菌薬投与患者(6,261件)
E:整腸剤投与(3,277件)
C:整腸剤非投与(2,984件)
O:CDI発症率
デザイン:RCTのメタ解析
2次アウトカム:有害事象の発生率
サブグループ解析:整腸剤の種類や量、タイミング、製剤、期間、研究の質
評価者バイアス:2人の評価者が独立して行なった。
出版バイアス:英語以外OK、調査者への連絡OK、Funnel Plot OK。
元論文バイアス:RCTのメタ解析である。ITTかどうかは不明。
異質性バイアス:I2は小さい。ブロボグラムはOK。
【結果】
1次アウトカム(CDIの発生率)(diarrhea and either positive stool cytotoxin, culture, or polymerase chain reaction testing for C difficile←今までの文献でいうCDADとだいたい同じ。)
E群 vs C群:1.6% (54/3277) vs 3.9% (115/2984)(相対リスク(RR) 0.42;95%CI:0.30-0.57;I2=0.0%)
2次アウトカム(有害事象)(本文中とグラフ中の数字が違う気がするのですが…)
本文中:14.2% (433/3056) vs 15.9% (439/2753)(RR 0.89;95%CI:0.69-1.14;I2=48%)
グラフ中:14.5% vs 14.1%(RR 0.97;95%CI:0.86-1.09)
サブ解析(投与タイミング(抗生剤投与から整腸剤開始までの間隔))
1-2日:RR 0.32;95%CI:0.22-0.48, I2=0.0%
3-7日:RR 0.70;95%CI:0.40-1.23, I2=0.0%
両群の比較:P=0.02
(1日と2-7日の比較でも有意差があったとのこと)
【考察】
注目したのはサブ解析です。投与タイミングは3日以降であれば有意差が出ず、1日と2-7日の比較でも有意差があったとのこと。投与するのであればできるだけ早く投与した方がいいのかもしれません。
【全体を通して】
整腸剤投与による副作用は問題なさそうですし、積極的に投与すればいいのではないかと思います。再発率が高い疾患で、再発してしまうと厄介なことも多いですから。
できるだけ早く投与する必要があるようなので、処方忘れには注意しておきたいところです。いっそのこと、バイアルに整腸剤くっつけておこうかな。。。それか、整腸剤入りの抗生剤の開発を。。。