リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

12/15(土) 居酒屋抄読会in難波 ツイキャス配信のご案内と開催報告【EPA関連】

12/15の19:00頃から居酒屋抄読会を開催し、リアルタイムでツイキャス配信致します。(注:いつもより早い時間です!)

大阪の難波の居酒屋よりこちら【zuratomo@AHEADMAP 柴 (@zuratomo4) 's Live - TwitCasting)】のツイキャスから配信予定です。

 

今回は、先日発表されたEPAに関する報告の【REDUCE-IT】を読んでいきたいと思います。

Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia.

(高TG血症におけるIcosapent Ethylによる心血管リスク減少)

N Engl J Med. 2018 Nov 10.

PMID: 30415628

※アブストラクトのみしか読めませんが、この論文の題名をそのまま検索していただくとPDFが落ちていますので、よろしければそちらをご用意ください。

 

おそらくこれだけではすぐに終わりそうなので、他にもEPA関連の論文を読んでいこうと思っております。

候補を挙げておきます。

Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis.

Lancet. 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.

PMID: 17398308

Omega-3 fatty acids for the primary and secondary prevention of cardiovascular disease.

Cochrane Database Syst Rev. 2018 Nov 30;11:CD003177.

PMID: 30521670 

Marine n-3 Fatty Acids and Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer.

N Engl J Med. 2018 Nov 10.

PMID: 30415637 

Effects of n-3 Fatty Acid Supplements in Diabetes Mellitus.

N Engl J Med. 2018 Oct 18;379(16):1540-1550.

PMID: 30146932 

Serial circulating omega 3 polyunsaturated fatty acids and healthy ageing among older adults in the Cardiovascular Health Study: prospective cohort study.

BMJ. 2018 Oct 17;363:k4067.

PMID: 30333104 

 

今年はたくさんEPA関連の論文が発表されたようですね~

 

いつもと同じく、居酒屋でお酒を飲みながらゆるーくやっていきます。よろしければご参加ください!

 

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【居酒屋抄読会in難波 開催報告】

開催してまいりました!

録音はこちらから↓

twitcasting.tv

twitcasting.tv

 

前述しましたが、今回は先日発表されたEPAに関する報告の【REDUCE-IT】を読みました。

Cardiovascular Risk Reduction with Icosapent Ethyl for Hypertriglyceridemia.

(高TG血症におけるIcosapent Ethylによる心血管リスク減少)

N Engl J Med. 2018 Nov 10.

PMID: 30415628

※アブストラクトのみしか読めませんが、この論文の題名をそのまま検索していただくとPDFが落ちています。

試験デザインについてはこちらを→https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28294373

 

【PECO】

P:空腹時TG値が135-499mg/dL、LDLコレステロール値が41-100mg/dLの45歳以上の確立した心血管疾患のある患者または50歳以上のDM+少なくとも一つの他の危険因子をもつ患者(平均年齢:64歳、男性:約70%、平均BMI:30.8)(n=8,179)

E: icosapent ethyl 2gを1日2回(合計4g/日)服用(n=4,089)

C:プラセボ(n=4,090)

O:主要アウトカム-心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、冠動脈再建術、または不安定狭心症による入院の複合

 

デザイン:RCT(三重盲検;Participant, Investigator, Outcomes Assessor)

副次的アウトカム:心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中(key secondary end point)などなど…

脱落率: icosapent ethyl群9.9%、プラセボ群11.2%

ITT解析はされているか?:されている

 

【結果】

主要アウトカム(主要アウトカム-心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、冠動脈再建術、または不安定狭心症の複合)

E群 vs C群:17.2% vs 22.0%(ハザード比(HR) 0.75;95%CI:0.68-0.83)、NNT=21(4.9年)

 

副次的アウトカム(心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中(key secondary end point ))

E群 vs C群:11.2% vs 14.8%(HR 0.74;95%CI:0.65-0.83)、NNT=28(4.9年)

 

気になった主要アウトカムにおけるサブ解析

・1次予防と2次予防

 ○1次予防:12.2% vs 13.6%(HR 0.88;95%CI:0.70–1.10)

 ○2次予防:19.3% vs 25.5%(HR 0.73;95%CI:0.65–0.81)

・DMの有無

 ○あり:18.1% vs 22.4%(HR 0.77;95%CI:0.68–0.87)

 ○なし:16.0% vs 21.5%(HR 0.73;95%CI:0.62–0.85)

 

有意差のついた主な有害事象(E群 vs C群)

・下痢:9.0% vs 11.0%、末梢性浮腫:6.5% vs 5.0%、便秘:5.4% vs 3.6%、心房細動:5.3% vs 3.9%、貧血:4.7% vs 5.8%

 

【考察】

イコサペント酸エチル4g/日の服用にて、主要アウトカムに減少が認められました。NNTは驚異的な数字です。

 これは結果がきれいすぎて怪しいやつですね。。。今までの研究の流れとは違いますし、疑いたくなってしまいます。

一つは、イベントの発生率が高いのかな?と。比較的若い人が対象で、イベントリスクもさほど大きい集団とは思いませんが、主要アウトカムは20%ほどの発生となっております。

また用量としては高用量であり、日本の用量とは大きく異なります。これに関しては「DISCUSSION」に、別の試験にて4gのイコサペント酸を服用したヨーロッパの患者のEPA濃度が183mg/Lになり、日本人の平均の170mg/Lに類似したとの記載があります。そう考えると日本人には必要ないのかもしれません。

それとこの試験のスポンサー会社であるは、ホームページ(https://www.amarincorp.com/default.aspx)を見る限りこの製品の情報しかありません。てことは、良い結果を出そうとしたのでは??と考えてしまいます。これは考えすぎかも…

 

 

次は、抄読会でさらっと紹介したコクランを。

Omega-3 fatty acids for the primary and secondary prevention of cardiovascular disease.

Cochrane Database Syst Rev. 2018 Nov 30;11:CD003177.

PMID: 30521670

※こちらもアブストラクトのみしか読めませんが、この論文の題名をそのまま検索していただくとPDFが落ちています。

 

【PECO】

P:79のRCTに含まれた112,059人

E:イコサペントエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などの長鎖オメガ3(LCn3)の高用量摂取

C:低用量摂取

O:全死亡、心血管イベントなど

※α-リノレン酸(ALA)に関する解析は割愛します。

 

コクランなので、デザインやバイアス等々はある程度信用して、今回は割愛します。

追跡期間:12-72か月

 

【結果】

・全原因死亡率:RR 0.98(95%CI:0.90-1.03)、n=92,653、39試験、全原因死亡=8189人の死亡、質の高いエビデンス

・心臓血管死亡率:RR 0.95(95%CI:0.87-1.03)、n=67,772、25試験、CVD死=4544人

・心血管イベント:RR 0.99(95%CI:0.94-1.04)、n=90,378、38試験、心血管イベント=14,737人、質の高いエビデンス

・脳卒中:RR 1.06(95%CI:0.96-1.16)、n=89,358、28試験、脳卒中=1822人

・冠動脈性心疾患(CHD)死:RR 0.93(95%CI:0.79-1.09)、n=73,491、21試験、CHD死亡=1596人

・不整脈:RR 0.97(95%CI 0.90-1.05)、n=53,796、28試験、不整脈=3788人

・CHD:RR 0.93(95%CI:0.88-0.97)、n=84,301、28試験、CHD=5469人

 

【考察】

ほぼ全く差がつかず…

ただこの試験にはサプリメントも含まれていますし、DHAも含まれておりますので、EPA単独のことはよく分からないです。

 

 

最後にもう一つ、JELIS試験を。抄読会ではほとんど触れませんでしたが紹介しておきます。アブストラクトのみしか読めません。

Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis.

Lancet. 2007 Mar 31;369(9567):1090-8.

PMID: 17398308

 

【PECO】

P:総コレステロール6.5mmol/L以上の18,645人の日本人

E: EPA1800mg/日+スタチン(n=9,326)

C:スタチンのみ(n=9,319)

O:主要冠動脈イベント(突然の心血管死、致死的・非致死的心筋梗塞、ならびに不安定狭心症、血管形成術、ステント留置または冠動脈バイパス移植を含む他の非致死的事象を含む)

 

デザイン:PROBE法

平均追跡期間:4.6年

 

【結果】

主要アウトカム(主要冠動脈イベント)

E群 vs C群:262人(2.8%) vs 324人(3.5%);ハザード比(HR)0.81;95%CI:0.69-0.95

 

サブ解析(E群 vs C群)(1次予防、2次予防別による主要冠動脈イベントの発症率)

〇1次予防:104人(1.4%) vs 127人(1.7%);p=0.132

〇2次予防:158人(8.7%) vs 197人(10.7%);p=0.048

※全文読めずに詳細が不明な部分がありましたので、こちら(JELIS_循環器トライアルデータベース)を参考にさせていただきました。

 

【考察】

PROBE法ということで、大幅に結果は割り引いてもいいような気がします。

主要アウトカムに有意差はありましたが、差は0.7%であり、NNTは143となっております。また、主要アウトカムがたくさんの種類のイベントの複合であることもすごく気になります。

アブストラクトのみしか読めませんでしたので、詳細を知りたいものです。

こう見てみると、あまり意味のある試験には思いませんが…

 

【全体を通して】

よく分かりません…EPAが少しくらいは何かの足しにはなりそうな気もしますが…

サプリはあまり効果が期待できないけど、医薬品になって高純度(?)になれば効果が期待できそうな気もしますし。

ひとまず、漁師町に住んでいて魚を頻繁に食べている私にとってはさほど必要がない気はしています。

 

上述したように今年はEPAに関する興味深い論文が多数発表されておりますので、また時間のある時に読んでみたいと思います(←多分読まない人の書き方w)