今回は結石の予防についての論文を紹介します。
まずは水分摂取についてのメタ解析を。
Treatment effect, adherence, and safety of high fluid intake for the prevention of incident and recurrent kidney stones: a systematic review and meta-analysis.
(腎結石の発生および再発予防のための大量の水分摂取の治療効果、アドヒアランス、安全性:システマテックレビュー&メタ解析)
J Nephrol. 2016 Apr;29(2):211-219.
PMID: 26022722
【PECO】
P:18歳以上のメタ解析に含まれた人(2RCT;269人、7観察研究;273,685)
E:大量の水分摂取(尿量2L/日、2.5L/日以上、水分摂取2.5L/日以上くらいの目安が多い)
C:不十分な水分摂取
O:尿路結石発生および再発リスク、アドヒアランス、安全性
デザイン:メタ解析(RCT2報および観察研究7報)
評価者バイアス:2人の評価者で抽出が行われている
出版バイアス: MEDLINE、EMBASEからの抽出。言語制限は不明。Funnel Plotはなし。
元論文バイアス:RCTのメタ解析は含まれるが2報のみ
異質性バイアス:RCT;I²=6%、観察研究;I²=92%。ブロボグラムは概ね一致している。
Limitation:
・RCTの質は低い(だが、大部分の観察研究の質は高い)。
・腎結石の事象が自己報告である研究が含まれている。
・すべての研究における腎結石の大部分はCa結石。
・薬剤の使用が考慮されていない研究が多い。
・観察研究のメタ解析に異質性があり、原因は診断法、再発の定義、観察期間、交絡因子などが考えられる。
【結果】
主要アウトカム
〇腎結石発生リスク
・RCT:リスク比(RR) 0.40(95%CI:0.20-0.79)(I²=6% 、2試験、n=269)
・観察研究:RR 0.49(95%CI:0.34-0.71)(I²=92%、7試験、n=273,685)
〇再発腎結石発生リスク
・RCT:RR 0.40(95%CI:0.20-0.79)(I²=6%、2試験、n=269)
・観察研究:RR 0.20(95%CI:0.09-0.44)(I²=86%、2試験、n=289)
【考察】
2L/日以上程度の水分摂取が腎結石のリスクを低減させることが示唆されております。
1980年から2014年7月までの検索でしたが、想像よりもかなり少ない文献しか該当しなかったようで。他のメタ解析でも同じような数でしたので問題ないんだと思います。
Limitationに記載されているように様々な懸念があり、それほど質のいいメタ解析だとは思いませんが、RCT、観察研究のいずれのメタ解析でも同じような結果となっておりますし、信頼できるのかなと思います。今さらRCTは難しいと思いますし。。。
また、解析のアウトカムとして挙げられていた安全性やアドヒアランスはデータが不十分とのことで解析されておりませんでした。たしかに安全性は気になります。水分摂取が多いことでなにかリスクになることがあるのでしょうか?
ちなみに、このRCT2報とそのメタ解析については「尿路結石症診療ガイドライン 2013年版 」にて以下のように記載されております。
飲水指導が再発予防に有効か否かについてのRCT では,Borghi ら13)が199 名の初発尿路結石症患者を対象として,1 日2,000 mL 以上の飲水指導を行った群と行わなかった群の5 年後再発率を調べた。その結果,飲水指導群では12.1%,非指導群では27%であり,有意差(p=0.008)を認め,さらに両群の尿量(p<0.001),シュウ酸カルシウム結晶溶解度(CaOx RS)(p<0.001)にも有意差が認められたとしている。
Sarica ら14)は,ESWL 治療を受けた腎結石患者70 名を対象として,1 日尿量2,500 mL 以上となるよう飲水指導を行った群と行わなかった群の24〜36 か月後(平均30.4 か月後)の再発率を調べた。その結果,飲水指導群では8%,非指導群では56%であり,有意差(p<0.01)を認めたとしている。
Fink ら15)は,これらのRCT から1 日2,000 mL 以上の水分摂取を行い,1 日尿量を2,500 mL以上とすることで再発リスクを61%(relative risk:0.39,95% confidence interval:0.19〜0.80)に減少できるとしている。
次は薬物治療による再発予防効果について
Medical management to prevent recurrent nephrolithiasis in adults: a systematic review for an American College of Physicians Clinical Guideline.
Ann Intern Med. 2013 Apr 2;158(7):535-43.
PMID: 23546565
【PECO】
P:腎結石歴のある患者
E:種々の介入あり
C:種々の介入なし
O:腎結石の再発リスク
デザイン:RCTのメタ解析(28RCT)
評価者バイアス:2人の評価者で行われている
出版バイアス: MEDLINE, Cochraneやその他のデータベースやシステマテックレビューやRCTの参考文献から抽出。言語は英語のみ。Funnel Plotはなし。
元論文バイアス:RCTのメタ解析
異質性バイアス:I²は全体的に小さい。ブロボグラムは概ね一致している。
Limitation
・少数の試験のデータが含まれている。
・有害事象のデータがほとんどない。
・ほとんどの試験参加者は特発性カルシウム結石を有しており、他の結石には適応されない可能性。
・独立したアウトカムとして症候性の結石の再発が報告された試験はほとんどなく、治療とは関係ないかもしれない。
・試験間のベースラインに一貫性がない。
【結果】
主要アウトカム(種々の薬剤による腎結石の再発リスクへの効果)
〇サイアザイド系薬群 vs プラセボ or コントロール群:リスク比(RR) 0.52(95%CI:0.39-0.69]; 5試験;n=300;I²=0%)
〇クエン酸製剤群 vs プラセボ or コントロール群:RR 0.25(95%CI:0.14-0.44]; 4試験;n=197;I²=0%)
〇アロプリノール群 vs プラセボ or コントロール群:RR 0.59(95%CI:0.42-0.84]; 2試験;n=152;I²=0%)
【考察】
やはり規模の大きな試験はなく、信頼性はそれほど高くないような印象ですが、サイアザイド系薬、クエン酸製剤、アロプリノールの服用にて、腎結石再発リスクの低減が示唆されております。
アロプリノールに関しては、本文中に「although the benefit from allopurinol seemed limited to patients with baseline hyperuricemia or hyperuricosuria.」という記載も見られますので、効果は高尿酸血症患者に限定的なのかもしれません。
ただ、結石が頻繁に再発することは多くないと思いますし、それぞれの薬剤に有害事象がありますのでこれを主な目的に処方されるケースは少ないように思います。頭の片隅に置いておけばよい知識かと思います。
ちなみにこれらも前述した「尿路結石症診療ガイドライン 2013年版 」に記載がありますので、よろしければそちらも参考にされてください。
・CQ 35 サイアザイドによる再発予防効果はあるか? また,投与期間はどのくらい必要か?
・CQ 38 高尿酸血症に対する尿酸生成抑制薬は尿路結石再発予防に有効か?
【全体を通して】
尿路結石予防のために有効な手法がいくつかあることが分かりました。ただ薬物治療に関してはそれぞれに有害事象もあるのでさほど優先されるべきではないと思いますし、薬物療法の試験では水分摂取アップも併せて促されていたようですので、まずは水分摂取アップが第一選択になるのかなと思います。
尿路結石になった身としては、しっかりと肝に銘じておきたいと思います。絶対に再発は嫌なので。。。
ちなみに、食事に関する介入等も今回紹介したメタ解析に含まれていたのですが、試験の質、規模の影響もありまだまだ分からないことも多いようです。やはり水分摂取ですね。どんどん飲みましょう♪(お酒はほどほどに…)