さて今回は、「JMIC-B」「VARUE」「ASCOT-BPLA」の3つの論文を紹介していきます。
まずは「JMIC-B」試験。
Comparison of nifedipine retard with angiotensin converting enzyme inhibitors in Japanese hypertensive patients with coronary artery disease: the Japan multicenter investigation for cardiovascular diseases-B (JMIC-B) randomized trial.
Hypertens Res. 2004 Mar;27(3):181-91.
PMID: 15080377
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2001817.html
【PECO】
P:高血圧及び冠動脈疾患と診断された75歳以下の1650人の日本人外来患者
E:ニフェジピン徐放錠(10-20mg×2回/日)群828人
C:ACEI(エナラプリル5-10mg, イミダプリル5-10mg, リシノプリル10-20mg)群822人
O:心血管イベント(心血管死、突然死、心筋梗塞、狭心症・心不全入院、重篤な不整脈、冠動脈介入)の複合
デザイン:PROBE
平均年齢:65歳
追跡期間:3年
アブストラクトのみ or 全文:全文
【結果】
ニフェジピン群 |
ACEI群 |
ハザード比 (95%CI) |
|||
発生率 |
1000人当たりの年間発生率 |
発生率 |
1000人当たりの年間発生率 |
||
主要アウトカム(心血管イベントの複合) |
14.0% |
64.69 |
12.9% |
63.42 |
1.05 (0.81-1.37) |
心筋梗塞 |
1.9% |
8.36 |
1.6% |
7.31 |
1.31 (0.63-2.74) |
心不全入院 |
1.4% |
6.23 |
1.1% |
5.06 |
1.25 (0.52-2.98) |
心血管死 |
0.7% |
3.11 |
0.7% |
3.36 |
0.96 (0.31–3.04) |
総死亡 |
1.4% |
6.21 |
1.8% |
8.40 |
0.76 (0.35–1.63) |
重篤な有害事象 |
ニフェジピン群(発生率) |
ACEI群(発生率) |
P値 |
低血圧 |
1.0% |
0.2% |
<0.01 |
浮腫 |
0.8% |
0% |
<0.01 |
空咳 |
0% |
7.3% |
<0.01 |
【感想】
主なアウトカムに差は見られず。ニフェジピン群の方がやや降圧作用は強く、αブロッカーの併用はACEI群で多かったよう。
一方、有害事象は特徴が出ているように思います。ニフェジピン群の浮腫は少なすぎる気もしますが…
PROBE法ということで、解釈に注意が必要かと思います。
次は「VARUE」試験。
Outcomes in hypertensive patients at high cardiovascular risk treated with regimens based on valsartan or amlodipine: the VALUE randomised trial.
Lancet. 2004 Jun 19;363(9426):2022-31.
PMID: 15207952
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2000055.html
【PECO】
P:15245人の50歳以上の心血管イベントリスクの高い治療中・未治療の高齢者
E:バルサルタン(+ヒドロクロルチアジド)(7649人)
C:アムロジピン(+ヒドロクロルチアジド)(7596人)
O:突然の心臓死、致命的な心筋梗塞、経皮的冠動脈インターベンションまたは冠状動脈バイパス移植術中またはその後の死亡、心不全死、剖検での最近の心筋梗塞に伴う死亡、入院が必要な心不全、致命的でない心筋梗塞または心筋梗塞を予防するための緊急処置の複合
デザイン:2重盲検RCT
平均年齢:67歳
追跡期間:平均4.2年
アブストラクトのみ or 全文:全文
【結果】
バルサルタン群 |
アムロジピン群 |
ハザード比 (95%CI) |
|||
発生率 |
1000人当たりの年間発生率 |
発生率 |
1000人当たりの年間発生率 |
||
主要アウトカム(Oに記載のアウトカム) |
10.6% |
25.5 |
10.4% |
24.7 |
1.04 (0.94–1.15) |
心筋梗塞 |
4.8% |
11.4 |
4.1% |
9.6 |
1.19 (1.02–1.38) |
総死亡 |
11.0% |
25.6 |
10.8% |
24.8 |
1.04 (0.94–1.14) |
糖尿病新規発症 |
13.1% |
32.1 |
16.4% |
41.1 |
0.77 (0.69–0.86) |
※脳卒中、心不全、心血管死はそれぞれ有意差なし
重篤な有害事象 |
バルサルタン群 (発生率) |
アムロジピン群 (発生率) |
P値 |
末梢浮腫 |
14.9% |
32.9% |
<0.0001 |
重症な狭心症 |
4.4% |
3.1% |
<0.0001 |
低K血症 |
3.5% |
6.2% |
<0.0001 |
【感想】
主要アウトカムは両群で有意差はなかったが、アウトカムの複合の幅が広くて解釈が難しい。心筋梗塞単独ではアムロジピン群の方が少なかったが、たくさんある副次的アウトカムの一つなので、これだけで判断するのは難しい。
バルサルタン群で糖尿病の新規発症や末梢浮腫、低K血症が少ないのが特徴的。高K血症をアウトカムにすれば、バルサルタンの方が多くだったと思われるので、このアウトカム設定は上手いというかなんというか。
ちなみに、他の降圧剤の追加については、バルサルタン群にて特にαブロッカーの追加が多かったようで、それにて同等の降圧作用となったよう。
バルサルタンを発売しているノバルティスの後援のある試験なのである程度の割引が必要であり、全体として解釈が難しい試験のように思います。
最後は「ASCOT-BPLA」試験。
Prevention of cardiovascular events with an antihypertensive regimen of amlodipine adding perindopril as required versus atenolol adding bendroflumethiazide as required, in the Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial-Blood Pressure Lowering Arm (ASCOT-BPLA): a multicentre randomised controlled trial.
Lancet. 2005 Sep 10-16;366(9489):895-906.
PMID: 16154016
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2002409.html
【PECO】
P: 40〜79歳で少なくとも3つの他の心血管危険因子のある高血圧症の19257人
E:アムロジピン5-10mg(+ペリンドプリル4-8mg)群(n=9639)
C:アテノロール50-100mg(+ベンドロフルメチアジド1.25-2.5mgおよびカリウム)(n=9618)
O:非致死的心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を含む)および致死的冠動脈性心疾患(CHD)
デザイン:PROBE
平均年齢:63歳
追跡期間:中央値5.5年
アブストラクトのみ or 全文:アブストラクトのみ
【結果】
主要アウトカム(非致死的心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を含む)および致死的CHD)
〇E群 vs C群:4.5% vs 4.9%;非調整HR 0.90(95%CI:0.79-1.02)
副次的アウトカム
〇致死的および非致死的な脳卒中:3.4% vs 4.4%;HR 0.77(0.66-0.89)
〇心血管イベントおよび手術の合計:14.1% vs 16.7%;HR 0.84(0.78-0.90)
〇全死因死亡率:7.7% vs 8.5%;HR 0.89(0.81-0.99)
〇糖尿病の新規発症:5.9% vs 8.3%;HR 0.70(0.63-0.78)
【感想】
ありとあらゆるアウトカムでE群が有利な結果に。PROBE法ではありますが、それを考慮してもE群に有利な結果となっており、同患者群であえてβ遮断薬を積極的に使用する必要はなさそうです。ただ、追跡期間5.5年での差としてはかなり小さいものだと思いますので、理由があればβブロッカーを使用してもよいのではないかと思います。
今回は以上です。