今回は「ACCOMPLISH」「HYVET」「HIJ-CREATE」の3つの論文を紹介していきます。
まずは「ACCOMPLISH」試験から。
Benazepril plus amlodipine or hydrochlorothiazide for hypertension in high-risk patients.
N Engl J Med. 2008 Dec 4;359(23):2417-28.
PMID: 19052124
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2002416.html
【PECO】
P:アメリカ、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランドの548施設の心血管イベントリスクの高い11506人
E:ベナゼプリル(20mg/日)+アムロジピン(5mg/日)(5744人)
C:ベナゼプリル(20mg/日)+ヒドロクロロチアジド(12.5mg/日)(5762人)
O:心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、狭心症による入院、突然の心停止後の蘇生、冠動脈血行再建術の複合
※ベナゼプリルは1か月後に40mgに増量。アムロジピン、ヒドロクロロチアジドはそれぞれ血圧管理目標140/90mmHgになるように10mg、25mgに増量された。
デザイン:2重盲検RCT
平均年齢:68歳
追跡期間:平均3年
アブストラクトのみ or 全文:全文
【結果】
ベナゼプリル+アムロジピン群 |
ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド群 |
ハザード比 (95%CI) |
|
主要アウトカム(Oに記載) |
9.6% |
11.8% |
0.80(0.72-0.90) |
心血管死 |
1.9% |
2.3% |
0.80(0.62-1.03) |
心血管死+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中 |
5.0% |
6.3% |
0.79(0.67-0.92) |
総死亡 |
4.1% |
4.5% |
0.90(0.76-1.07) |
有害事象
・めまい:E群 20.7% vs C群 25.4%
・末梢浮腫:31.2% vs 13.4%
・低K血症:0.1% vs 0.3%
・低血圧:2.5% vs 3.6%
【感想】
主要エンドポイント等に有意差がつきましたが、これを大きな差とみるのか小さな差とみるのか。10年以上の単位で見ていくと比較的大きなさになる気がします。3年以後はどうなるか分かりませんが。でもこの状況であえてCa拮抗薬より利尿剤を優先する意義は少ないように思います。
脱落が両群とも30%ほどあったのは気になるところですが。
次は「HYVET」試験。
Treatment of hypertension in patients 80 years of age or older.
N Engl J Med. 2008 May 1;358(18):1887-98.
PMID: 18378519
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2001018.html
【PECO】
P:収縮期血圧160mmHg以上のヨーロッパ、中国、オーストラリア、チュニジアの80歳以上の高齢者3845人
E:インダパミド徐放錠1.5mg(1933人)
C:プラセボ(1912人)
O:致死的および非致死的脳卒中の複合
デザイン:2重盲検RCT
平均年齢:83.6歳
追跡期間:中央値1.8年
アブストラクトのみ or 全文:全文
【結果】
インダパミド群 (1000人当たりの発生率) |
プラセボ群 (1000人当たりの発生率) |
調節ハザード比(95%CI) |
|
主要アウトカム(Oに記載) |
12.4 |
17.7 |
0.70(0.49-1.01) |
総死亡 |
47.2 |
59.6 |
0.79(0.65-0.95) |
心血管死 |
23.9 |
30.7 |
0.77(0.60-1.01) |
心不全 |
5.3 |
14.8 |
0.36(0.22-0.58) |
〇重篤な有害事象:E群 448件 vs C群 358件(P=0.001)
血清K値:-0.02mmol/L vs 0.03mmol/L (p=0.09)
尿酸値:0.2mg/dL vs 0.1mg/dL (p=0.07)
血糖値:2.9mg/dL vs2.0mg/dL (p=0.56)
クレアチニン値:0.04mg/dL vs 0.03mg/L (p=0.30)
【感想】
超高齢者で、しかもインダパミドで実薬群に有利な結果が出たことは驚きではありますが、上記のアウトカムで一番差のある総死亡でも1.8年で絶対差1.2%なので、これがどこまで意味のあるものなのかとは思います。有効性とのトレードの因子となる有害事象がザックリとした報告しかなかったのが残念です。
本文より、より健康な患者に対して行われた試験のようで、フレイル等の高齢者には当てはめにくいようです。
平均血圧はベースラインで173/90、2年で実薬群は平均143/77mmHg、プラセボ群は158/84mmHgということで、さほど厳格には下げなくてもよさそうです。また、150/80mmHgに達しない場合,ACE阻害薬perindopril 2mg~4mgを追加投与可であり、実薬群の2年後の投与薬はインダパミド単独投与25.8%、インダパミド+ペリンドプリル2mg併用23.9%、インダパミド+ペリンドプリル4mg併用49.5%であったようなので、多くの症例でACEIが使用されていることも考慮しないといけないです。
最後は「HIJ-CREATE」試験。
Angiotensin II receptor blocker-based vs. non-angiotensin II receptor blocker-based therapy in patients with angiographically documented coronary artery disease and hypertension: the Heart Institute of Japan Candesartan Randomized Trial for Evaluation in Coronary Artery Disease (HIJ-CREATE).
Eur Heart J. 2009 May;30(10):1203-12.
PMID: 19346521
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2003053.html
【PECO】
P:高血圧のある血管造影にて診断された冠状動脈疾患日本人患者2049人
E:カンデサルタンベース(n=1024)
C: ACEIを含む非ARBベース(n=1025)
O:主要有害心血管イベント(MACE)(心血管死、非致死性心筋梗塞、心不全、不安定狭心症、脳梗塞、その他入院を必要とした心血管イベント)
デザイン:PROBE
平均年齢:65歳
追跡期間:中央値4.2年
アブストラクトのみ or 全文:全文
Limitation:PROBE法であること。イベント発生数が想定より少なかったこと。試験前のウォッシュアウト期間を設けなかったこと
【結果】
カンデサルタンベース群 |
非ARB群 |
ハザード比 (95%CI) |
|||
発生率 |
1000人当たりの年間発生率 |
発生率 |
1000人当たりの年間発生率 |
||
主要アウトカム(Oに記載) |
25.8% |
64.0 |
28.1% |
69.7 |
0.89 (0.76-1.06) |
心血管死 |
2.7% |
6.8 |
2.4% |
6.0 |
1.14(0.66–1.95) |
総死亡 |
6.7% |
16.7 |
5.8% |
14.3 |
1.18 (0.83–1.67) |
糖尿病新規発症 |
1.1% |
2.7 |
2.9% |
7.2 |
0.37 (0.16–0.89) |
重篤な有害事象 |
カンデサルタンベース群(発生率) |
非ARB群(発生率) |
P値 |
咳 |
3.0% |
16.1% |
0.001 |
めまい |
16.8% |
15.0% |
0.273 |
高K血症 |
1.4% |
1.0% |
0.410 |
【感想】
この試験は最終的にC群の70%でACEIが使われており、ARB vs ACEIの様相もあるのです。しかもPROBE試験ということでよく分からないです。新規糖尿病の発症に差がみられますが、C群の3割でACEIが使われていないですし、症例数が少ないのでARBが優れているとは一概には言えない気がします。ACEIによる咳の副作用が目立ちますね。
今回は以上です。