今回は整腸剤の便秘への効果について取り上げます。
「慢性便秘症診療ガイドライン2017」を参考に、文献を2つ取り上げます。
(整腸剤の項のガイドラインで取り上げられていたメタ解析はやや古く、それがアップデートされたような論文を選んでおります。)
まずは一つ目
The effect of probiotics on functional constipation in adults: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.
(成人の機能性便秘に対する整腸剤の効果)
Am J Clin Nutr. 2014 Oct;100(4):1075-84.
PMID: 25099542
【PECO】
P:機能性便秘の成人(14試験、1182人)
E:整腸剤の使用
C:整腸剤の非使用
O:腸通過時間、週の排便回数、便性状
デザイン:RCTのメタ解析
評価者バイアス:2人の評価者が独立して行っている
出版バイアス:英語をはじめ、日本語、中国語の論文もあり。Funnel plotの記載はないが、Egger testの結果はあり。P>0.05。
元論文バイアス:RCTのメタ解析。ITT解析かどうかは不明
異質性バイアス:ブロモグラフは概ね一致している。I²は大きめ
Limitation:整腸剤の種類が異なっており、また種類によって結果がやや異なっている。
【結果】
〇腸通過時間の差(加重平均(WMD))
E群 vs C群:-12.4 h(95%CI:-20.3 to -2.5 h)(I²=23%、2試験、n=141)
〇排便回数の差(WMD)
E群 vs C群:1.3回/週(95%CI:0.7-1.9回/週)(I²=90%、10試験、n=1,060)
〇便の硬さ(標準化平均差(SMD))
E群 vs C群:+0.55(95%CI:0.27-0.82)(I²=80%、10試験、n=1,003)
【考察】
いずれのアウトカムにおいても有意に便秘が改善しておりましたが、Limitationにあるように、整腸剤の種類が異なること、また種類によって結果が異なり、異質性が高くなっていることが気になります。
2つ目
Contemporary meta-analysis of short-term probiotic consumption on gastrointestinal transit.
(消化管通過時間への短期間の整腸剤使用の現代のメタ解析)
World J Gastroenterol. 2016 Jun 7;22(21):5122-31.
PMID:27275105
【PECO】
P:便秘患者675人、15試験
E:整腸剤の使用
C:整腸剤の非使用
O:腸通過時間
デザイン:RCTのメタ解析
サブ解析:便秘vs便秘なし、質の高い研究vs質の低い研究等
評価者バイアス:2人の評価者が独立して行っている
出版バイアス:英語のみ。Funnel plotあり、問題なし。Egger testはP>0.05。
元論文バイアス:RCTのメタ解析(半分くらいはクロスオーバー)。ITT解析かどうかは不明
異質性バイアス:ブロモグラフは概ね一致している。I²の記載は主要アウトカムのみ。低め。
Limitation:試験期間は56日までであり、長期的な効果は不明。Nが少なめのため、整腸剤間の差異が不明。男性と高齢者のデータが少ない。
【結果】
〇主要アウトカム【腸通過時間(標準化平均差(SMD))】
E群 vs C群:0.38(95%CI:0.23-0.53)(I²=20%、17試験、n=675)
〇サブ解析
便秘 vs 便秘なし:0.57(0.39-0.75) vs 0.22(0.05-0.39)、P <0.01
質の高い研究 vs 質の低い研究:0.45(0.31-0.59) vs 0.00(-0.33 to 0.33)、P=0.01
39歳以上 vs 39歳未満:0.51(0.29-0.73) vs 0.27(0.09-0.44)、P=0.08
治療期間18日未満 vs 18日以上:0.45(0.29-0.60) vs 0.22(-0.06 to 0.50)、P=0.17
【考察】
主要アウトカムのSMDは0.38であり、大きくはない効果が見られたようです。サブ解析は参考程度かと思いますが、便秘患者の方がそうでないよりは変化が起こりやすいのではないかと感じました。
【全体を通して】
まだまだこの分野に関しては質の高い試験が不足しているようです。劇的な効果はなさそうですが、少しくらいは効果が期待できそうな印象です。種類も用量もどれがいいのかはよく分かっていない感じかと思います。副作用はほとんど気にしなくていいと思いますので、慢性的に便秘があり、下剤をあまり使いたくないようなケースでは一つの選択肢になるかもしれませんが、期待をし過ぎずに。。。