1年以上ぶりの更新になります。。。
「サラゾスルファピリジン腸溶錠」が出荷調整となり、代替薬の検討をしなければならなくなりました。いろいろ調べてみると同じDMARSの「イグラチモド」が代替薬としてよいのではないか?という意見がちらほら。
てことで調べてみました!
まずは両剤の作用機序から(それぞれのIFより引用)
〇サラゾスルファピリジン腸溶錠
本剤の作用機序は明確ではないが、炎症性サイトカインの産生抑制、樹状細胞の活性化抑制、アデノシンを 介する抗炎症作用、破骨細胞の分化抑制作用、軟骨破壊に関与する MMP (matrix metalloproteinase)の産生抑制作用などが基礎実験で認められている。これらの様々な作用により、免疫異常の是正、炎症の鎮静化、 軟骨破壊抑制等の抗リウマチ作用をもたらすと考えられる。
〇イグラチモド
B細胞による免疫グロブリン(IgG、IgM)の産生及び単球/マクロファー ジや滑膜細胞による炎症性サイトカイン(TNFα、IL‒1β、IL‒6、IL‒8、MCP‒1)の産生を抑制する ことにより、抗リウマチ作用を示す。これらの作用は、免疫グロブリンや炎症性サイトカインの mRNA発現低下を伴っており、転写因子Nuclear FactorκB(NFκB)の活性化抑制を介した作用であることが示唆されている。このような作用が本薬の免疫抑制的な作用や抗炎症作用の発現につながり、 結果として関節リウマチ患者でみられる過剰な免疫応答や炎症・疼痛反応を抑制するものと考えられている。
よく分かんないです…
さて、両剤の効果を比較した論文を見ていきます。
pubmedで検索したところ、2件の論文を見つけました。
まずは一つ目。
こちらはイグラチモドの第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験となっております。
(IFに詳しく記載してありますので、詳細はそちらでご確認ください。)
Efficacy and safety of iguratimod compared with placebo and salazosulfapyridine in active rheumatoid arthritis: a controlled, multicenter, double-blind, parallel-group study
P:日本人の活動性RA患者(n=376)
E:イグラチモド(25mg×2回/日)(n=147)
C:プラセボ(n=73)およびサラゾスルファピリジン(500mg×2回/日)(n=156)
O:28週時点でのACR20反応率
※「イグラチモド(n=132) vs プラセボ(n=64)」は優越性試験、
「イグラチモド(n=103) vs サラゾスルファピリジン(n=104)」は非劣勢試験
↓イグラチモドIFより
デザイン:二重盲検RCT
追跡期間:28週
脱落率:多め、3-4割が脱落している
ベースライン:女性80%、平均年齢57歳(65歳以上:75%)、ステロイド併用60%
【結果】
ACR20反応率
〇イグラチモド vs プラセボ
53.8% vs 17.2%;率差 36.6%(95%CI:24.0 to 49.2)
〇イグラチモド vs サラゾスルファピリジン
63.1% vs 57.7%;率差 5.4%(95%CI:-7.9 to 18.7)
ACR50反応率
〇イグラチモド vs サラゾスルファピリジン
33.0% vs 33.7%(有意差なし)
服用開始後4週ごとの有効率
☆早期試験中止の発生率
イグラチモド群37.4%、サラゾスルファピリジン群41.0%、プラセボ群45.2%
※そのうち副作用による早期中止はそれぞれ32.7%、42.2%、9.1%
※効果不十分による早期中止は27.3%、23.4%、57.6%
☆副作用とされたAST又はALT上昇の発現率
イグラチモド群17.7%、サラゾスルファピリジン群9.7%、プラセボ群3.0%
☆副作用とされたAST又はALT濃度が100IU以上の発現率
イグラチモド群7.7%、サラゾスルファピリジン群2.1%、プラセボ群0%
☆副作用とされた胃腸障害の発現率
イグラチモド群19.2%、サラゾスルファピリジン群9.0%、プラセボ群9.0%
※イグラチモド群で消化性潰瘍2件あり
【考察】
イグラチモドとサラゾスルファピリジンの有効性の比較では同等との結果になりました。少し効果発現がイグラチモドで早そうですが、わずかな差ですかね。
やや脱落が多いのが気になるところではありますが。
副作用としては肝障害や胃腸障害に注意が必要なようです。これについては最後にまとめます。
次は二つ目。
こちらはアブストラクトのみしか読めなかったので簡単に紹介します。
Efficacy of iguratimod vs. salazosulfapyridine as the first-line csDMARD for rheumatoid arthritis
P: 3年間の試験期間中にイグラチモドまたはサラゾスルファピリジンを初回治療として投与されたRA患者(n=197)
E/C:イグラチモド群/サラゾスルファピリジン群
O:36か月目における継続率、奏効率(good or moderate response)、PSL使用割合、PSL投与量、有害事象累積発生率
デザイン:後ろ向き観察研究
【結果】
【考察】
イグラチモド有利な結果が並んでおります。全文が読めないので評価が難しいですが、少なくともサラゾスルファピリジンより劣っている可能性は少なそうです。
【まとめ】
サラゾスルファピリジンとイグラチモドは同等の効果が期待できそうです。代替薬の一つとして検討してよいのではないかと思います。
ちょうど先日イグラチモドは後発品が発売されましたし、(それでもまだサラゾスルファピリジンよりは高いですが)提案しやすくなったのではないでしょうか。
ただし、イグラチモド処方の際にはいくつかの注意点がありますのでそれを最後にまとめていきます。
【イグラチモド処方時の注意点】
〇肝障害に注意!
紹介したように肝障害の発現率が高くなっております。添付文書には以下のような記載がありますので、投与する際は留意が必要です。
本剤投与前には必ず肝機能の検査を実施すること。また、投与中は臨床症状を十分に観察するとともに、投与開始後最初の2ヵ月は2週に1回、以降は1ヵ月に1回など定期的に肝機能検査を行うこと。
なお、肝機能については、臨床試験において、AST(GOT)、ALT(GPT)増加の発現率が高かったことから、異常が認められた場合には、投与継続の可否を検討するとともに、特に目安として100IU以上に増加した場合は投与を中止すること。
なお、性別、体重別等の肝障害発現率はIFに以下のように記載されております。
〇胃腸障害に注意!
イグラチモドはCOX-2阻害作用を併せ持ち、イグラチモド単独投与の全試験及びメトトレキサートとの併用試験において、重大な副作用として消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)が0.68%(7/1030 例)に認められております。IFには以下のように記載されております。
消化性潰瘍は本剤のシクロオキシゲナーゼ‒2(COX‒2)阻害作用に起因すると考えられている。なお、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAID)でみられる消化管障害は、COX‒1 の阻害によるプロスタグランジン産生抑制に起因するとされているが、COX‒2 選択的阻害薬によっても同様に消化管障害が発生することが報告されている。
消化性潰瘍があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては、下血等の消化器症状があらわれた場合には投与を中止するなど、適切な処置を行うこと。
また、NSAIDとの併用による胃腸障害発現率上昇も報告されており、NSAID併用の際は十分に注意が必要です。(以下IFより)
〇ワーファリンとの併用禁忌!!
機序不明ではありますが、イグラチモドとワルファリンの併用にてワルファリンの作用増強が報告されております。ワルファリン服用患者へのイグラチモド処方は避けましょう。
製造販売後において、ワルファリンとの相互作用が疑われる重篤な出血又は血液凝固能検査値の異常変動(PT‒INR 増加)が報告され、そのうち死亡に至った症例が認められたことから併用禁忌とした。ワルファリンの治療を必要とする患者には、ワルファリンの治療を優先し、本剤を投与しないこと。
今回は以上になります!