リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

尿路結石の排石を促進させる薬剤もろもろ-1(α遮断薬)

【症例シナリオ】

30代男性。既往歴特になし。

とある日の16時ごろ、急に右腰部への激痛を感じて救急外来を受診。エコー、CT撮影を経て「上部尿路結石」と診断された。結石の大きさは約6mmであった。

翌日からはNSAIDにて疼痛コントロール可能となったが、NSAIDの効果が切れると激痛を感じる状態であり、また突発的な痛みもあり、1日も早く排石したいという思いがある。

そこで、排石を促進させる薬剤がないかを調べることとした。

「尿路結石症診療ガイドライン 2013年版」(Minds:尿路結石症診療ガイドライン 2013年版 、PDF:http://www.urol.or.jp/info/guideline/data/03_urolithiasis_2013.pdf)には以下のような記載があった。

CQ 10 尿管結石の自然排石を促進する薬剤にはどのようものがあるか?

A.尿管結石の自然排石を期待できる薬剤には,α1 遮断薬あるいはカルシウム拮抗薬があり,10 mm 以下の結石では自然排石率が増加することが報告されている。症状がコントロールできている患者に対しては第1 選択となり得る。ただし,尿管結石排石促進としての保険適用はない。(推奨グレード:B1)

ウラジロガシエキスや漢方薬(猪苓湯)などは尿管結石排石促進作用に対してよく用いられてきたが,エビデンスレベルの高い報告はない。しかし,その効果を否定するものではない。(推奨グレード:C1)

 もう少し詳しくみていくと、

最も多くのエビデンスがあるのがα1 遮断薬であるタムスロシン(0.4 mg)であり,メタアナリシスでもタムスロシン内服群において,10 mm 以下の結石の自然排石率が有意に高く(RR:1.54,54% vs 83%),排石までの時間も有意に短縮された(9.5 日vs 6.1 日)。また,タムスロシンはカルシウム拮抗薬であるニフェジピンとの比較試験においても,同等かそれ以上の有効性が示されている。さらに,ESWL 後の排石促進効果をみたメタアナリシスにおいても,タムスロシン群はコントロール群に比較して,15〜20%の排石促進効果を認めた。

 との記載があった。

そのまま鵜呑みにしてもよかったのではあるが、ガイドラインが2013年版とやや古いので、最新の論文を検索して読んでみることとした。

 

という私のほぼ実症例です(笑)

 いやー、本当に痛かったです。。。この闘病記についてはいつかブログで。

 

てことで今回は尿路結石へのα遮断薬の効果をみた文献を3つ紹介します。

まずは、コクランレビューから。(アブストラクトのみ)

Alpha-blockers as medical expulsive therapy for ureteral stones.

(結石排石促進療法としてのα遮断薬) 

Cochrane Database Syst Rev. 2018 Apr 5;4:CD008509.

PMID: 29620795

 
【PECO】

P:尿路結石患者

E: α遮断薬服用

C:標準療法

O:排石率

 

デザイン:67件のRCTのメタ解析

副次的アウトカムおよびサブ解析:有害事象、排石時間、ジクロフェナクの使用、入院、外科介入の必要性、石の大きさ別の有効性

評価者バイアス:2人の評価者が独立して抽出している

出版バイアス:言語の制限およびFunnel Plotの使用はアブストラクトに記載がなく不明。CENTRAL, MEDLINE Ovid, Embaseを検索し、非公開のものや現在進行中のものまで調べている。著者と連絡を取っている。

元論文バイアス:RCTのメタ解析。ITTかどうかは不明

異質性バイアス:ブロモグラムのばらつきについては記載がないため不明。I²はアブストには記載してないものが多く、評価が難しい。

 

【結果】

主要アウトカム

・排石率:リスク比(RR) 1.45(95%CI:1.36-1.55;低い質のエビデンス)

※質の高いサブセット:RR 1.16(95%CI:1.07〜1.25;中程度の質のエビデンス)、1000患者当たり116人多い(95%CI:51-182)。

 

副次的アウトカムおよびサブ解析

・主要な有害事象:RR 1.25(95%CI:0.80〜1.96;低い質のエビデンス)

※質の高いサブセット:RR 2.09(95%CI:1.13-3.86)、1000患者当たり29件多い(95%CI:3-75)。

・排石時間:平均差(MD) -3.40日(95%CI:-4.17 to -2.63;低い質のエビデンス)

・ジクロフェナクの使用:MD -82.41回(95%CI:-122.51 to -42.31;低い質のエビデンス)

・入院:1000患者当たり69人(95%CI:93-32)の減少

・外科介入の必要性:RR 0.74,(95%CI:0.53-1.02;低い質のエビデンス)、1000人当たり28人の減少(95%CI:51-2)。

・結石の大きさ別

5mm以下:RR 1.06 (95%CI:0.98-1.15; I² = 62%)

5mm以上:RR 1.45 (95%CI:1.22 to 1.72; I² = 59%)

※石の位置やα遮断薬の種類では差はなかったよう

 

【考察】

多くの項目でα遮断薬に有利な結果となっており、α遮断薬の使用はある程度の効果が見込めそうな感じです。ジクロフェナクの使用はかなりインパクトがありますし、イコール疼痛(発作?)の回数が少ないということだと思いますので、メリットは大きそうです。結石の大きさによって効果が異なるかもしれないのは興味深いところです。

ただ、アブストラクトだけだとわからないことも多いので、同じようなメタ解析でフリーで読めるものがBMJにありましたので、今度はそちらを見ていきます。

 

Alpha blockers for treatment of ureteric stones: systematic review and meta-analysis.

(尿路結石に対するα遮断薬での治療)

BMJ. 2016 Dec 1;355:i6112.

PMID: 27908918

 

【PECO】

P:尿路結石患者

E: α遮断薬服用

C:プラセボまたはコントロール

O:排石率

 

デザイン:55件のRCTのメタ解析

副次的アウトカム:排石時間、疼痛エピソードの数、手術実施、入院、有害事象の割合

評価者バイアス:2人が独立して抽出している

出版バイアス:言語の制限はなし。Funnel plotはまずまず

元論文バイアス:RCTのメタ解析。ITTかどうかは不明

異質性バイアス:ブロモグラムはまずまず。結石の大小の解析では、試験間で大小の境界の大きさが異なり、その「大」「小」で解析をしているためごちゃ混ぜになっている。I²は小さくはない。ベースラインの排石率にばらつきあり

 

【補足事項】

・(31の研究の)平均年齢:治療群 40.7歳(SD 6.9)、コントロール群 40.4歳(SD 6.1)、女性 0~59.6%

・(41の研究の)結石の大きさ:治療群 5.7mm(SD 1.2)、コントロール群 5.7mm(SD 1.1)

・α遮断薬の種類:タムスロシン(40件)、アルフゾシン(6件)、ドキサゾシン(4件)、ナフトピジル(3件)、シロドシン(6件)、テラゾシン(4件)

・追跡期間:28日(37件)、その他は7~42日のいずれか

 ・Limitation:全体的に試験方法にばらつきが多く、異質性が高い。薬剤間の差はなかったが、試験数が少ない薬剤があり、検出力不足の可能性がある。より小さな規模の試験を組み入れることができていない可能性がある。

 

【結果】

主要アウトカム

・排石率:リスク比(RR)1.49(95%CI:1.39-1.61;I²=60.2%;55研究;5,990人)

※28日の解析のみでの排石率:75.8%(95%CI:71.4%-80.0%) vs 48.2%(95%CI: 42.0%-54.4%)→27.6%の差;NNT=4

※結石の大小の解析では、試験間で大小の境界の大きさが異なり、その「大」「小」で解析をしているためごちゃ混ぜになっており、参考とせず。

 

副次的アウトカム

・排石時間:平均差 −3.79日(95%CI: −4.45 to −3.14; I2=74%;24試験;2,862人;中等度の質のエビデンス)。(重みづけなしにて排石までの日数は 8.8日 vs 13.3日)

・疼痛エピソードの数:平均差 −0.74回(95%CI:−1.28 to −0.21;I2=94%;13研究;1,235人;低い質のエビデンス)

・手術実施:RR 0.44(95%CI:0.37-0.52;I2=39%;32研究;3,758人;中等度の質のエビデンス)

・入院: RR 0.37(95%CI:0.22-0.64; I2=39%;8試験;1,007人;中等度の質のエビデンス

・有害事象の割合:試験間でのばらつきがあったようで、参考にならず…

※α遮断薬の薬剤間での差はなし

 

【考察】

コクランより2年古いものになりますが、似たような結果になっていたかと思います。

新たな発見として大きいのは、排石率におけるα遮断薬使用のNNTが4ということですね。これは是非とも使いたい!!

 

さて、ここまでみてきたのは異質性が比較的高かったので、タムスロシンのプラセボ対象2重盲検RCTのみを集めたというメタ解析を。

Effect of Tamsulosin on Stone Passage for Ureteral Stones: A Systematic Review and Meta-analysis. 

(尿路結石の排石へのタムスロシンの効果)

Ann Emerg Med. 2017 Mar;69(3):353-361.e3.

PMID: 27616037

 
【PECO】

P:8つのRCTに含まれた1,384人

E:タムスロシン群

C:プラセボ群

O:排石率、有害事象

 

デザイン:2重盲検プラセボ対象RCTのメタ解析

試験期間:21日(1試験)、28日(6試験)、42日(1試験)

評価者バイアス:2人の評価者が独立して抽出している

出版バイアス:言語の制限はなし。Funnel Plotの使用あり。 MEDLINE, EMBASE, CENTRAL databasesを検索→少ない??

元論文バイアス:RCTのメタ解析。ITTかどうかは不明

異質性バイアス:ブロモグラムの一致は全体としてはイマイチだが、大きさ別では概ね一致している。I²はやや大きい。

Limitation:8研究中7研究は遠位尿細管のみを登録。10mm以上は含まれない。有害事象としてのめまいに関しては異質性が高い。

 

【結果】

主要アウトカム

・排石率

E群 vs C群:85% vs 66%(リスク差 17%;95%CI:6-27%,I²=80.2%)NNT=6

 

サブ解析(結石の大きさ別の排石率)

・大きな石(5~10mm):リスク差 22%(95%CI:12%-33%,I²=33.1%,6試験,n=514)NNT=5

・小さな石(4~5mm未満):リスク差 –0.03%(95%CI:–3.9%-3.3%, I²=0%,4試験,n=533)

 

有害事象

・めまい:リスク差 0.2%(95%CI;–2.1%-2.5%,I²=67.8%,8試験)

・起立性低血圧:リスク差 0.1% (95%CI;–0.4%-0.5%,8試験)

 

【考察】

BMJのメタ解析で含まれていたタムスロシンの研究が40件だったことを考えると、今回のメタ解析は8件しか含んでいないので、少なすぎる気もしますが…

やはりNNTはかなり少ない数字に。これを考えると有効な気がしますね。

また結石の大きさ別では大きいもののみに効果があったという結果に。小さいものはタムスロシン服用しなくても十分に排石される、ということじゃないかと思っております。

有害事象に関しては、どの文献を読んでもよくわからないですね。α遮断薬なので、起立性低血圧には十分に注意すべきだと思います。

 

【全体を通して】

α遮断薬は十分に効果が期待できそうな気がします。NNTはかなり少ないですし、痛みから早く開放するというのは非常に重要なことだと思います。副作用リスクはそれほど大きな薬剤ではないですし。

 

【症例に対しての適応は?】

今回の症例の結石の大きさは6mmということで適応しそうですが、部位が上部ということで、「近位」になりますので、最後の文献の「遠位」とは異なります。まあでも有害事象のリスクはさほど高くないと思いますので、使ってもいいのかな、と思います。

というより、使いたいです!自分の症例だと若干甘くなってしまいますね。どうしても積極的な治療を選びたくなるような気がします。ほんとに辛くて早く解放されたいですし、、、それが理解できたのも良かったです。

 

次回は、同様にガイドラインに載っているCa拮抗薬についてみていきたいと思います。

COPD治療薬もろもろ-9【COPDとワクチン】

今回はCOPD患者の増悪の予防に重要といわれているインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの効果についてみていきます。

 

・インフルエンザワクチン

 

まずはインフルエンザワクチンについての論文を2つ紹介します。

Influenza vaccine for chronic obstructive pulmonary disease (COPD).

(COPDにおけるインフルエンザワクチン)

Cochrane Database Syst Rev. 2018 Jun 26;6:CD002733.

PMID: 29943802

 

【PECO】

P: COPD患者180人

E:不活化インフルエンザワクチン筋注

C:プラセボ

O:接種者一人当たりの増悪の総数

 

デザイン:メタ解析(2つのRCT)

 

【結果】

1人当たりの増悪の総数:平均差(MD) -0.37;95%CI:(-0.64) to (-0.11);2つのRCT,180人;質の低いエビデンス)

 

【考察】

アブストラクトのみしか読めておりません。

COPD患者限定の試験は少ないようで、メタ解析といえども2つのRCTで180人しか含まれておりません。接種一人当たり増悪が-0.37回ということで、十分に効果があるように思います。もう少し規模の大きい試験を見たい気もしますが、接種が推奨されている状態でのRCTは難しいかと思います。

 

2つ目です

高齢者COPDの急性増悪に対するインフルエンザワクチンの効果

日呼吸会誌 46(7),2008.P511-515

(こちらの論文はPubmedにも収載されております。PMID:18700566

The efficacy of influenza vaccine for acute exacerbation of chronic obstructive lung disease in elderly patients.

Nihon Kokyuki Gakkai Zasshi. 2008 Jul;46(7):511-5.)

 

【PECO】

P:COPD患者189人

E:インフルエンザワクチン接種189人(平均年齢73.5歳)

C:インフルエンザワクチン非接種100人(平均年齢75歳)

O:喘鳴による予定外通院、肺炎による入院、入院医療費削減効果

 

デザイン:前向き観察研究

マッチング:されていない

 

【結果】

喘鳴による予定外通院

・E群 vs C群:11人(5.8%) vs 23人(23.0%);相対リスク減少率(RRR) 74.7%(95%CI:0.52-0.87)

 

肺炎による入院

・E群 vs C群:8人(4.2%) vs 14人(14.0%);RRR 69.8%(95%CI:0.32-0.87)

入院コスト

f:id:gacharinco:20181007142725p:plain

※ワクチン非接種群は20人入院したが、うち3名は他の病院に入院し、コストが不明なため除外されている→その3名分を追加すると両群間の差はさらに増えると考えられる

 

【考察】

ランダム化もマッチングもされていないので、患者背景の違いが気になるところです。Table1を見る限りでは、ワクチン接種群の方にHOTが多く、年齢もやや高いことから、不利な条件のような気もしますが。

結果としては、ワクチン接種群の方が予定外通院、肺炎による入院率はかなり低い結果に。コスト的にもかなり低減していますね。そういった面からは有効なのではないかという印象です。

 

・肺炎球菌ワクチン

 

続きまして、肺炎球菌ワクチンについての文献を2つ。

まず一つ目

Pneumococcal vaccines for preventing pneumonia in chronic obstructive pulmonary disease.

(COPD患者における肺炎予防のための肺炎球菌ワクチン)

Cochrane Database Syst Rev. 2017 Jan 24;1:CD001390.

PMID: 28116747

 

 【PECO】

P:COPD患者2,171人(12RCT;平均年齢66歳、男性67%)

E:肺炎球菌ワクチン接種群

C:コントロール群

O:市中肺炎(CAP)発症予防効果、死亡への影響、COPDの急性増悪への影響

 

デザイン:メタ解析

 

 【結果】(全てE群 vs C群)

CAP発症:オッズ比 (OR) 0.62,95%CI:0.43-0.89;6試験, n = 1372; GRADE: 中等度;NNTB(1件のCAP発症予防に必要な治療数):21(95%CI:15-74)

全死亡:OR 1.00, 95%CI:0.72-1.40;5試験, n = 1053; GRADE:中等度

心呼吸系による死亡:OR 1.07, 95%CI:0.69-1.66;3試験, n = 888; GRADE:中程度

入院:差なし(詳細の記載なし)

COPD増悪:OR 0.60, 95%CI:0.39-0.93;4試験, n = 446; GRADE:中等度;NNTB(1件のCOPDの増悪予防に必要な治療数):8(95%CI:5-58)

 

【考察】

アブストラクトのみしか読めておりません。結果としてはCAPの発症やCOPDの増悪は抑えられたけれど、入院や死亡には影響はなかったという結果です。ただ、CAPの発症予防もCOPDの増悪もNNTBは小さい数字となっているので、摂取は推奨されるのではないかと感じました。

 

2つ目

Clinical efficacy of anti-pneumococcal vaccination in patients with COPD.

(COPD患者における肺炎球菌ワクチンの臨床的有効性)

Thorax. 2006 Mar;61(3):189-95. Epub 2005 Oct 14.

PMID: 16227328

 

【PECO】

P:平均65.8歳(SD9.7)のCOPD患者596人

E: 23価肺炎球菌ワクチン(PPV)接種(298人)

C:非接種(298人)

O:肺炎球菌または未知の病因によるCAPの発症率への影響

 

デザイン:RCT

 

【結果】

f:id:gacharinco:20181007153540p:plain

 

【考察】

対象者が少なかったので、検出力不足ということも十分にありそうですが。

また、上述のメタ解析にも含まれてそうですが。

この試験では、特に65歳未満で、またFEV1の低い群でより効果的な結果となっておりました。この結果を見る限りでは、使用してもいいのかな、という印象です。

 

・併用

 

最後に併用についての論文を。あまりいいのが見当たらず…ちょっと古くてアブストしか読めませんが、よく引用されている文献を紹介しておきます。

The additive benefits of influenza and pneumococcal vaccinations during influenza seasons among elderly persons with chronic lung disease.

(慢性呼吸器疾患高齢患者におけるインフルエンザシーズン間の肺炎球菌ワクチンとインフルエンザワクチンの追加効果)

Vaccine. 1999 Jul 30;17 Suppl 1:S91-3.

PMID:10471189

 

【PECO】

P:慢性呼吸器疾患高齢患者

E:肺炎球菌ワクチン接種、インフルエンザワクチン接種、両方接種

C:いずれも接種なし

O:3つのインフルエンザシーズン(1993-1994,1994-1995、および1995-1996)における肺炎による入院、死亡への有効性

 

デザイン:後ろ向き観察研究

マッチング:されていない

 

【結果】

f:id:gacharinco:20181007154458p:plain

※対照は「肺炎球菌ワクチンおよびインフルエンザワクチン両方未接種」

 

【考察】

あまりにもきれいな結果がでているので、ほんまかいな??という気はしますが。観察研究ということを割り引いても、単独でも効果は期待できそうですし、併用による上乗せ効果もありそうです。

 

【全体を通して】

 今回はCOPD患者限定の論文を探して紹介しました。さほど質の高い研究がなかったのは残念ですが…

いずれのワクチンについても、何か理由がない限りは接種が推奨したほうが、患者QOLは向上するのかなと感じました。「死亡」というアウトカムに関しては、いずれの研究でも有意差は認められておらず(ブログには載せてませんが、検討していた研究もありました)、その当たりはやや引っ掛かりますが、増悪を抑えるという意味では十分に効果が期待できるのではないかと思います。

COPD治療薬もろもろ-8【アシストユース】

今回はアシストユースのついての文献を3つご紹介して、その有用性を検討していきます。

ちなみに文献は、

月刊薬事2018年9月号(Vol.60 No.12)|株式会社 じほう

の特集記事の引用文献を使用しております。

 

まずアシストユースとは、

息切れが想定される動作(起床時、労作時、運動時、入浴時など)の前や、リハビリテーション実施前に、メプチンなど効果発現の早い短時間作用性気管支拡張薬の吸入を行うこと

と定義されています。

実は恥ずかしながら、今回の特集を読んで「アシストユース」という言葉を知りました。

 

まず一つ目。

Influence of inhaled procaterol on pulmonary rehabilitation in chronic obstructive pulmonary disease.

(COPD患者の呼吸リハにおけるプロカテロール吸入の影響) 

Respir Investig. 2012 Dec;50(4):135-9.

PMID: 23199977

 

【PECO】

P:中等度から重度の安定したCOPD患者21名

E:運動前にプロカテロールを吸入する群(N=10)

C:運動前にプロカテロールを吸入しない群(N=11)

O:12週間後の6分間歩行距離(6mwd;運動耐容性を評価するため)やSt. Georgeの呼吸質問票(SGRQ)(健康関連QOL(HRQOL)を評価するため)の変化

 

デザイン:ランダム化比較試験

 

【結果】(本文よりそのまま引用)

コントロール群と比較して、プロカテロール吸入実施群は有意な6MWDとSGRQスコアの改善を示した。

 

【考察】

アブストしか読めず、おおざっぱな結果しか書いていないのでよくわからず…(ちなみに月間薬事にはグラフが出てきますので、よろしければそちらでご確認ください)

 

残り2つは日本の論文です。

慢性閉塞性肺疾患の日常生活動作の息切れと QOL に対するプロカテロールの効果

日呼吸会誌, 47(9): 772-780, 2009
 
【PECO】

P:中等症から最重症のCOPD患者で,チオトロピウムおよび他の維持薬を使用中の患者24例(うち3名が脱落;男性20名、女性1名;平均年齢72.5±7.6歳;喫煙指数 49.5±20.1 pack years(全例喫煙者);対標準 1 秒量 53.1±16.1%)(使用薬剤:チオトロピウム:21 例(100%)、サルメテロール:19例(90.5%)、テオフィリン徐放薬:13例(61.9%)、吸入ステロイド薬:5例(23.8%))

E:アシストユースとしてメプチンエアーを使用後

C:使用前

O:肺機能検査、6分間歩行試験、QOL および息切れの変化

 

デザイン:全例介入試験

アシストユースの使用回数:1症例当たり1 回2puffで1日平均2.7回(最少0.4回最大4.8回)

有害事象は認められず

 

【結果】(本文より引用します)

肺機能検査:従来治療にメプチンエアー吸入を上乗せすることによって、FVC、FEV1、およびICともにさらに有意な改善効果が得られ、24週後もその効果は維持されていた。(Fig5)

6分間歩行試験:平均で28.4±66.4mの歩行距離の延長がみられたが、有意差はなかった。

SGRQ:「症状」は8週および24週後、「活動」は4 週,8 週および24週後、「衝撃」は 24週後、「総スコア」は4 週、8週および24週後でMCID(臨床的意義のある最少の差である4ポイント)を上回る有意な改善が得られた(Fig4)

息切れ:MRC息切れスケールを用いて外来受診時に息切れの評価を行ったところ、4週後および8週後とも有意なスコア改善が得られた。(Fig6)

f:id:gacharinco:20181007110630p:plain

(気になったので、Fig6を張りつけておきます)

 

【考察】

肺機能検査については、この差が実際にどのくらい効果的なのかがよく分かりませんが…

SGRQは一つの基準である4Ptを大きく上回っているものが多いので、それなりに効果的なのかな、と。

息切れはMRC息切れスケールが比較的改善しているように思いますので、効果がみられているように思います。(このスケールって統一されてなくて、いくつかあるんですね…)

メプチンの使用回数は多いような気がしますので、長期的な影響は不安です。

また、対象群がないので、それは割り引いて考えないといけません。

 

では3つ目を

短時間作用性β2刺激薬によるアシストユースがCOPD患者の身体活動量に及ぼす影響

日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 2017 年 27 巻 1 号 p. 48-53
 
【PECO】

P:外来通院し、GOLD分類Ⅲ以上、長時間作用型抗コリン吸入薬使用中の COPD 患者10名

E:アシストユースの使用後(4週、12週)

C:使用前

O:歩数、運動量(Kcal)、息切れ問診票(前項目)(移動動作項目)、TDI(Transitional dyspnea index)、CAT(COPD assessment test)

 

デザイン:全例介入試験

アシストユースの平均使用回数:2.9±0.7回

有害事象は認められず

 

【結果】

f:id:gacharinco:20181007114242p:plain

※歩数、運動量、息切れ問診票(前項目)(移動動作項目)、CATにおいて、吸入前vs4週後or12週後は全てP<0.01、TDIは4週後vs12週後にてP<0.05


【考察】
こちらも対象群がないので、割り引いて考える必要がありますが。
歩数が大幅に増えているのが特に印象的ですね。ただ他の文献では出てこない項目なので、評価項目としては妥当なのか?という思いもありますが。6分間歩行試験の方が一般的な気がしますが、1,000歩以上改善しているのはすごく印象的です。
こちらでも使用回数は3回近くありますので、長期的な影響が心配ではあります。
 
【全体を通して】
規模の大きな試験がまだ行われていないようですので、評価は控えめにしないといけないかもしれませんが、効果はそれなりにあるのではないかと思います。ただ、使用回数は比較的多いと思いますので、長期的な体への影響は不安です。逆に、長期間使用することでフレイル等を防ぐことができるかもしれません。
文献の考察や他の文献等を読む限りでは、単回の使用での改善はあまりみられないけれど、継続してアシストユースをしていくことで徐々に効果がみられてくるという見解が多いように思います。
心疾患がなく、メプチンを適切に使用でき、COPDにて行動が制限されるけれども比較的元気で動きたいという要望がある場合などは使用を検討してもいいのではないかと感じました。