リンコ's ジャーナル

病院薬剤師をしています。日々の臨床疑問について調べたことをこちらで綴っていきます。

7/21(土) 第▢回 居酒屋抄読会ツイキャス配信のご案内【UKPDS33&80】

7/21(土)の20:30頃から、第▢回の居酒屋抄読会を開催し、リアルタイムでツイキャス配信致します。

大阪の梅田の居酒屋よりこちら【zuratomo@AHEADMAP 柴 (@zuratomo4) 's Live - TwitCasting)】のツイキャスから配信予定です。

 

今回はまず、UKPDS33を読んでいこうと思います。

Intensive blood-glucose control with sulphonylureas or insulin compared with conventional treatment and risk of complications in patients with type 2 diabetes (UKPDS 33).

Lancet. 1998 Sep 12;352(9131):837-53.

PMID:9742976

PDF:https://www.vumc.nl/afdelingen-themas/41463/27797/2089686/1611848/1611870/literatuur.pdf

 (全文読めないですが、PDFが落ちていましたので、こちらからダウンロードをお願いします。)

 

また、時間は90分を予定しておりまして、おそらく時間が余るので、時間の許す限りUKPDS80も読んでいこうと思います。

10-year follow-up of intensive glucose control in type 2 diabetes.

N Engl J Med. 2008 Oct 9;359(15):1577-89.

PMID:18784090

  (こちらはフリーで全文読めます。)

 

いつもと同じく、居酒屋でお酒を飲みながらゆるーくやっていきます。よろしければご参加ください!

 

 

仮想症例は、準備が間に合えば…

インスリン分泌促進薬もろもろ-2(レパグリニドによる予後)

グリニド薬についての予後についてのRCTは探しても見つからず…

レパグリニド(とSU薬5種類)については、よく取り上げられている大規模なデンマークのコホート試験があったので、そちらを取り上げていきます。

 

Mortality and cardiovascular risk associated with different insulin secretagogues compared with metformin in type 2 diabetes, with or without a previous myocardial infarction: a nationwide study.

(心筋梗塞既往の有無による、2型糖尿病のメトホルミンと比較しての異なるインスリン分泌促進薬に関連する死亡率および心血管リスク:全国的な研究)

Eur Heart J. 2011 Aug;32(15):1900-8.

PMID: 21471135

糖尿病トライアルデータベースhttp://diabetes.ebm-library.jp/trial/detail/51225.html

 

【PECO】

P:20歳以上でDM治療をメトホルミンまたはインスリン分泌促進薬(ISs)単剤で行っているデンマーク住民107,806人(うちMI既往あり9,607人)

E:ISsによる治療

C:メトホルミンによる治療

O:総死亡率、心血管死亡、または「心筋梗塞(MI)、脳卒中、心血管死亡」の複合

 

【批判的吟味】

デザイン:コホート研究

追跡期間:中央値3.3年(最長9年)

傾向スコアマッチング:されている

調整された交絡因子:年齢、性別、総収入、糖尿病治療開始年、併存疾患、 「time-dependent adjustment for cardiovascular medical treatment during follow-up」

Limitation:残存交絡因子の可能性。メトホルミン、グリクラジド、レパグリニドは他よりも併存疾患が少ない。

 

【結果】

・MI既往なし(ハザード比(95%CI)、対象;メトホルミン群)

 

総死亡

心血管死

MI、脳卒中、心血管死

グリメピリド

1.27 (1.18– 1.36)

1.26 (1.14– 1.39)

1.29 (1.20–1.39)

グリクラジド

1.05 (0.91– 1.21)

1.15 (0.95– 1.39)

1.18 (1.02–1.36)

グリベンクラミド

1.13 (1.02– 1.25)

1.13 (0.98– 1.31)

1.16 (1.04–1.29)

グリピジド

1.16 (1.03– 1.30)

1.24 (1.06– 1.46)

1.24 (1.09–1.40)

トルブタミド

1.12 (0.99– 1.26)

1.16 (0.98– 1.36)

1.17 (1.03–1.33)

レパグリニド

1.00 (0.78– 1.29)

1.03 (0.37– 2.83)

0.87 (0.49–1.54)

・MI既往あり(ハザード比(95%CI)、対象;メトホルミン群)

 

総死亡

心血管死

MI、脳卒中、心血管死

グリメピリド

1.30 (1.08– 1.57)

1.29 (1.04– 1.60)

1.22 (1.30–1.46)

グリクラジド

0.85 (0.61– 1.17)

0.75 (0.52– 1.08)

0.71 (0.52–1.99)

グリベンクラミド

1.34 (1.03– 1.75)

1.40 (1.04– 1.88)

1.10 (0.85–1.41)

グリピジド

1.58 (1.19– 2.09)

1.53 (1.06– 2.21)

1.54 (1.12–2.10)

トルブタミド

1.46 (1.06– 2.01)

1.85 (1.67– 2.92)

1.44 (1.01–2.05)

レパグリニド

1.15 (0.68– 1.98)

1.10 (0.61– 2.00)

1.10 (0.67–1.82)

 

※イベント発生率

 

総死亡

心血管死

MI、脳卒中、心血管死

 

MI歴無

MI歴有

MI歴無

MI歴有

MI歴無

MI歴有

メトホルミン

3.6%

7.3%

1.9%

5.8%

3.8%

8.4%

グリメピリド

11.2%

18.9%

6.2%

15.2%

9.7%

19.3%

グリクラジド

7.5%

12.2%

4.3%

9.3%

7.4%

12.2%

グリベンクラミド

12.4%

22.2%

7.0%

17.7%

11.0%

22.9%

グリピジド

13.6%

21.4%

8.0%

17.4%

11.8%

23.3%

トルブタミド

14.8%

24.0%

8.6%

18.8%

12.8%

22.8%

レパグリニド

5.9%

14.0%

2.8%

11.3%

5.5%

15.1%

 

【考察】

本文中の結果はFig1の結果を示しているが、Fig3には「Propensity analyses」との記載があるので、そちらを引用。(どちらにしろさほど差はありませんが)

結果としては、グリピジド群及びレパグリニド群にてメトホルミン群と有意差がなかった。ただ気になるのはベースラインがその3群では他剤群と異なり、併存疾患が少ないこと。それがどこまで調整されているか…しかし、上記のイベント発生率ではその3剤と他剤では大きく差があるので、ベースラインが異なるだけでは語れないものもありそうな印象。糖尿病トライアルデータベースには、「SU薬のうちリスク増加を示した薬物はすべて,心臓のSU受容体に結合するものであること(心筋虚血時に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている)があげられる。心臓に作用せず,膵臓のみに作用する薬物はgliclazideのみであること,またグリニド薬は作用時間が短いことから,心臓に悪影響を及ぼさず,エンドポイント上昇に影響しなかった可能性が考えられる。」と記載してあり、それを裏付けているのかもしれない。

グリニドに関してはRCTを見てみたい気もするが…グリニド間の差も知りたいですね。やはりレパグリニドを使うのが無難か。。。

SU薬については以前にこちら(インスリン分泌促進薬もろもろ-1(SU剤まとめ))

でもまとめましたが、グリピジドが他剤よりは安全に使えるような印象を受ける。

 

【補足】

レパグリニドを使う上では、クロピドグレルとの併用には十分な注意が必要なのでしっかり覚えておきましょう!

シュアポストとプラビックス、併用注意のなぜ:日経DI Online

 こんな恐ろしい症例報告もありました…

レパグリニドとクロピドグレル併用による遷延性重症低血糖の1例

入院患者の血糖コントロールはどのくらいがいいですか?

まずはRCTから。NICE-SUGAR試験というなんとも素敵な試験。この界隈では有名な試験のようで。

 

Intensive versus conventional glucose control in critically ill patients.

(重症患者における強化血糖コントロールと標準血糖コントロールの比較)

N Engl J Med. 2009 Mar 26;360(13):1283-97.

PMID: 19318384

NEJMの日本語アブスト→重症患者における強化血糖コントロールと標準血糖コントロールの比較 | 日本語アブストラクト | The New England Journal of Medicine(日本国内版)

 

【PECO】

P:集中治療室(ICU)での治療が 3 日間以上必要と予想される成人患者6,104人(平均年齢;約60歳、男性;約63%)

E:強化血糖コントロール(目標血糖値;81~108 mg/dL)群3,054人

C:標準血糖コントロール(目標血糖値;180mg/dL以下)群3,050人

O:ランダム化後90日以内の死亡

 

【批判的吟味】

脱落率:E群;304人(10%)、C群;225人(7.4%)、全体;529人(8.7%)

ITT解析されているか?:されている(と記載されているが、per protocol解析のような気が)

副次的アウトカム:原因別死亡(詳細は付録Cを参照)、および機械換気、腎代替療法、ICUおよび入院期間

第三次アウトカム:無作為化後28日以内の任意の原因による死亡、死亡場所(ICU、病院病棟またはその他)、新たな臓器不全の発生率、血液培養陽性、赤血球輸血の受領および輸血容積

 

介入の詳細

インスリン使用:E群97.2%、C群69.0%

1日平均インスリン使用単位:E群50.2±38.1 vs C群16.9±29.0

平均加重血糖値:E群115±18mg/dL vs C群144±23mg/dL

 

【結果】

主要アウトカム(90日以内の死亡率)

E群 vs C群:27.5% vs 24.9%;オッズ比(OR) 1.14(95%CI:1.02-1.28)、絶対リスク差2.6%(95%CI:0.4-4.8)、NNH=38

 

副次的アウトカム

28日以内の死亡:22.3% vs 20.8%;OR 1.09(95%CI:0.96-1.23)

重篤な低血糖(40mg/dL以下):6.8% vs 0.5%;OR 14.7(9.0-25.9)、絶対リスク差6.3%、NNH=15

※ICU入室期間、入院期間、死亡場所(ICU or その他入院 or 入院外)は有意差なし

※死因別では、心血管疾患がE群にて多めだが、有意差はなし

 

サブ解析(条件別死亡率)

〇手術入院or手術入院外

手術入院:OR 1.31(1.07-1.61)

手術入院外:OR 1.07(0.93-1.23)

 

〇重篤な敗血症の有無

有:OR 1.13(0.89-1.44)

無:OR 1.15(1.01-1.31)

 

〇ステロイドの有無

有:OR 0.88(0.66-1.19)

無:OR 1.20(1.06-1.36)

 

【考察】

強化コントロール群で90日以内の死亡率が高く、低血糖は圧倒的に多いという結果。目標血糖値を81~108 mg/dLにしたら、そりゃそうなるよな、と。今回の結果を見るかぎりでは、強化コントロールのいいところは何一つとしてない感じですので、標準コントロールで十分かなと。

 

 

次はメタ解析(システマテックレビューと書いてありますが、メタ解析されている。)

Intensive insulin therapy in hospitalized patients: a systematic review.

(入院患者における集中的なインスリン療法:システマテックレビュー)

Ann Intern Med. 2011 Feb 15;154(4):268-82.

PMID: 21320942

 

【PECO】

P:種々の疾患にて入院中の患者

E:集中的な血糖管理

C:集中的ではない血糖管理

O:短期間(28日以内)の死亡率、長期間(90日又は180日)の死亡率、感染症、入院期間、低血糖

 

【批判的吟味】

抽出した試験:31件(集中治療室:13,周術期:7,急性脳障害:11)

評価者バイアス:二人の査読者が独立して行っている。

出版バイアス:英語のみ。Funnel Plotはなし。

元論文バイアス:RCTのメタ解析。

異質性バイアス:I²はまずまず。プロボグラムも概ね問題ない。

 

【結果】

主要アウトカム(28日以内の死亡)

E群 vs C群:相対リスク比(RR) 1.00(95%CI:0.94-1.07)、I²=0%、21試験、14,768人

 

副次的アウトカム

〇90日 or 180日の死亡:RR 1.05(0.99-1.02)、I²=0%、13試験、10,948人

 

〇感染症

敗血症のみ:RR 0.79(0.62-1.00)、I²=53.1%、9試験、10,677人

敗血症以外(創傷感染、尿路感染、肺炎):RR 0.68(0.36-1.30)、I²=53.1%、7試験、997人

合計:RR 0.78(0.62-0.97)、I²=50.7%、16試験、11,674人

 

〇重篤な低血糖(40mg/dL未満):RR 6.00(4.06-8.87)、I²=57.9%、9試験、11,899人

 

【考察】

こちらも厳格コントロールのメリットはほとんど見当たらない結果。感染症はやや減るかもしれないが、低血糖のリスクの方がそれを上回るか?感染リスクの高い場合は、少しくらいは厳しくしてもいいのかもしれないが、そういう設定では低血糖のリスクも高そうな気が。

先に記述したNICE-SUGAR試験がこのメタ解析のn数の多くを占めており、その結果に引っ張られている可能性もある。

入院理由別だと、もしかしたら違う結果が出るかもしれない。

 

【全体を通して】

厳格にコントロールをする根拠は乏しいのかな、と。ゆるく、180mg/dL未満くらいを目標にして、低血糖には十分に注意してコントロールしていけばよさそう。

 

※糖尿病のカテゴリーに入れましたが、いずれの文献も対象患者は糖尿病に限定されているわけではないようです。