今度、一般の方向けに「サプリメントや健康食品」について話してほしいと言われまして。とりあえず、ずっと気になっていた有害事象に関する文献を読んでみました。
Emergency Department Visits for Adverse Events Related to Dietary Supplements.
(サプリメントに関する有害事象による救急受診)
N Engl J Med. 2015 Oct 15;373(16):1531-40.
PMID:26465986
日本語アブスト訳→http://www.nejm.jp/abstract/vol373.p1531
方法
サプリメントに関連する有害事象を原因とする米国内の救急部受診の状況を明らかにするために、2004~13年に63の救急部から得た全米を代表するサーベイランスデータを利用した。(3,667件が同定され、これをもとに年間の救急受診数が推定された。)
結果
・サプリメントに関連する年間救急受診数:23,005件(95%CI:18,611-27,398)
・そのうちの年間入院数:2,154件(9.4%)(95%CI:1,342-2,967)(95%CI:6.7-12.0%)
・小児の無監督下摂取(誤飲のこと?):21.2%(18.4-24.0)
・65歳以上の成人の救急受診のうち、窒息、錠剤による嚥下障害または咽頭異物感によるもの:37.6%(95%CI:29.1-46.2%)
・小児の無監督下摂取を除いた、栄養補助食品とハーブまたは微量元素での使用目的の内訳(2.4%(1.4-3.3)は、複数のため除外)(Table2)
〇栄養補助食品(65.9%(63.2-68.5))
体重減少:25.5%(23.1-27.9)
体力増強:10.0%(8.0-11.9)
〇ハーブまたは微量元素(31.8%(29.2-34.3))
マルチビタミンまたは未特定のビタミン:16.8%(15.1-18.5)
鉄:4.7%(3.4-6.1)
カルシウム:3.4%(2.5-4.3)
・年齢別、製品分類別の年間有害事象発生件数(Fig2)
5-19歳の減量+体力増強:51.2%(44.2-58.3)
20-34歳の減量+体力増強:56.4%(51.8-61.1)
20-34歳の減量:2661人(1995-3326)
・サプリメントの種類別の有害事象の症状(Table3)
〇体重減少
動悸・胸痛・頻脈:42.9%(38.4-47.4)
頭痛・めまい・失神・他の急性の感覚運動器障害:32.1%(26.2-38.0)
吐き気・頭痛・腹痛:18.6%(13.6-23.7)
〇体力増強
動悸・胸痛・頻脈:46.0%(39.1-52.9)
頭痛・めまい・失神・他の急性の感覚運動器障害:34.3%(25.7-43.0)
吐き気・頭痛・腹痛:23.0%(15.9-30.1)
〇微量元素
軽度~中等度のアレルギー反応:40.6%(34.2-47.1)
薬剤関連嚥下障害・咽頭違和感:23.6%(17.1-30.0)
窒息による気道閉塞:19.4%(10.7-28.0)
考察
推定の方法はよく分かりませんが、今回は置いておいて。
小児の誤飲(?)がかなりの数で含まれておりますが、それは有害事象なのかどうかよく分かりませんが…まあいいとして。
本文中にlimitationとして、「患者の自己申告のため、過小評価している可能性がある。」「患者がサプリメントと認識していない可能性があり、過小評価をしている可能性がある。」「サプリメントの相互作用がよく分かっていない。」「誤ってサプリメントの有害事象と判断している可能性がある。」的なことが記載されております。てことは、今回の推定よりも多い可能性が十分にありそうです。
入院率の9.4%は高いように思いますが、どうでしょうか?(Supplymentaryを見ると、65歳以上は16%のようですが)。
あと気になったのは、体重減少目的による有害事象の多さですね。特にFig2を見ると若い方(Fig1を見ると圧倒的に女性)が多いです。効果はあったのだろうか…効果がなくて有害事象だけ出たら最悪ですからね。そういう問題じゃないかもしれませんが…その前に、そんな痩せなくても…
それと、高齢者で窒息、錠剤による嚥下障害または咽頭異物感が多いのには驚きました。高齢者の嚥下障害については、P1538下「Among older adults~」に記載されているのですが、なかなか興味深かったです。
アメリカの報告だったので、日本版がないかなと思って探してみました。が、個別の製品での報告はあるのですが、まとまったものはあまりなく。一つだけ気になったものがあったので読んでみました。
Jpn J Drug Inform 2013;14(4):134-143.
方法
名城大学薬学部医薬情報センターが作成している副作用、中毒症例報告データベースシステムより抽出された327件(1988年~2009年)が対象。
結果
・死亡例13例:ゲルマニウム6例、中国製ダイエット用健康食品4例、アマメシバ1例、にがり1例、カバノアナタケ茶1例
表1
表4
考察
このデータベースがどういった役割をしているのか分からないので、その辺が難しいですが。なので、年齢とか件数とかは何とも言えない気がします。
これを読んでよかったのは、健康食品関連で発生し問題となった有害事象について一通り整理できたことですね。ウコンや中国製ダイエット用健康食品のことはなんとなく知っていましたが、ゲルマニウム(こちらもご参考に)やαリポ酸(こちらもご参考に)、クロレラのことについては全然知りませんでした。色々あったんですねぇ。(それぞれ、「国立栄養・健康研究所」の「健康食品データベース」へのリンクを付けておきました。)
ついでに、最近話題になったプエラリア・ミリフィカについても(報道の詳細はこちら→
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170713_1.pdf)
感想
それなりの頻度で有害事象が発生するようですし、中には重篤なものもあるようです。その中で効果は…という感じです。なかなか闇は深いなぁ、と。
また、効果についてはいつか。。。