Efficacy and safety of interventions to control myopia progression in children: an overview of systematic reviews and meta-analyses.
P:18歳未満の近視の子供6,400人
E:近視への種々の介入
C:コントロール、プラセボ、他の介入
O:ジオプトリー(D)、軸長の長さ(mm)の1年間の変化の差および有害事象
※ジオプトリー(D):その目を正視に屈折矯正するために必要なレンズの度数。Dを表す式は D = 1 (m) / 焦点距離 (m)。 近視では負の値、正視の場合は0となり、遠視では正の値となる。(「Wikipedia」より)
※軸長:角膜から網膜までの長さ。日本人の成人の場合、眼軸長の平均は約24mm程度。この長さが数mmでも長くなると、ピントが網膜より手前で合ってしまい、遠くが見えにくくなる。(「ME-MAMORU~子供の近視情報サイト~」より)
デザイン:メタ解析
評価者バイアス:2人の評価者が独立して行っている
出版バイアス:言語の制限はなし。Funnel Plotなし
元論文バイアス:RCTもコホート研究も含まれるが、解析は別で行われている
異質性バイアス:異質性は高め(含まれた論文が少ない)
【結果】
主要アウトカム【ジオプトリー(D)の1年間変化の差(95%CI) 】
〇1%アトロピン vs プラセボ(RCT):-0.78D(-1.30 to -0.25)(3試験,n=604,I²=97%)
〇1%アトロピン vs コントロール(コホート研究):-0.39D(-0.59 to -0.19)(3試験,n=798,I²=26%)
〇0.025-0.05%アトロピン vs コントロール:-0.51D(-0.60 to -0.41)(3試験,n=224,I²=9%)
〇0.01%アトロピン vs コントロール:-0.50D(-0.76 to -0.24)(1試験,n=60)
〇2%ピレンゼピン vs プラセボ:-0.30D(-0.51 to -0.09)()1試験,n=84)
〇角膜矯正術 vs SCLs or SVLs:-0.27D(-0.50 to -0.04)(1試験,n=39)
〇多焦点ソフトコンタクトレンズ vs SVSCLs:-0.15D(-0.27 to -0.03)(3試験,n=264,I²=0%)(異質性を高めていた1つの試験を除外)
主要アウトカム【軸長(mm)の1年間変化の差(95%CI) 】
〇1%アトロピン vs コントロール:-0.36mm(-0.41 to -0.30)(3試験,n=586,I²=46%)
〇2%ピレンゼピン vs プラセボ:-0.10mm(-0.18 to -0.01)(2試験,n=264,I²=0%)
〇角膜矯正術 vs SCLs or SVLs :-0.19mm(-0.21 to -0.16)(8試験,n=524,I²=0%)
〇多焦点ソフトコンタクトレンズ vs SVSCLs:-0.12mm(-0.19 to -0.06)(3試験,n=264,I²=66%)
有害事象【オッズ比(95%CI) 】
〇1%アトロピン vs コントロール
・アレルギーまたは過敏反応または不快感:8.91(1.04-76.03)
・近くのぼやけ:9.47(1.17〜76.78)
〇2%ピレンゼピン vs プラセボ
・調節障害:16.92(6.27-45.64)
【考察】
アトロピン、ピレンゼピン、角膜矯正術、多焦点ソフトコンタクトレンズの有効性が示唆されました。全体的に試験が少なく、それぞれの試験の質にも左右されそうではあります。特にアトロピンはいずれの濃度でも有効性が示せていますので、それなりに効果が期待できそうです。散瞳薬なので、それに伴う副作用には十分な注意が必要なように思います。現在でも様々な介入が試みられているようで、今後の進展に期待したいと思います。
次は、少し前のものですがネットワークメタ解析を。
Efficacy Comparison of 16 Interventions for Myopia Control in Children: A Network Meta-analysis.
(子供の近視コントロールのための16の介入の有効性の比較:ネットワークメタ解析)
P:18歳未満の近視の小児
E/C:16通りの種々の近視に対する介入[アトロピン(高用量(1%または0.5%)・中等量(0.1%)・低用量(0.01%))、ピレンゼピン、シクロペントラート、チモロール、角膜矯正、より多くの屋外アクティビティ(14〜15時間/週)、種々の視力矯正眼鏡・コンタクトレンズ]
O:ジオプター(D)の平均年間変化(D/年)および軸長の平均年間変化(mm/年)のそれぞれの介入による差
評価者バイアス:2人の評価者が独立して行っている
出版バイアス:英語以外も抽出されている。Funnel Plotなし
元論文バイアス:RCTのメタ解析
異質性バイアス:I²は比較的高め
ネットワーク図:あるが研究数は少ない。閉じた環はあまりない。
直接比較・間接比較:いずれも記載あり、結果は概ね一致している。
【結果】
〇高用量アトロピンは、いずれの有効性のアウトカムにおいても角膜矯正を除くすべての介入より有意に優れていた。
〇有効性に、アトロピンの濃度による差はなかった。
〇プラセボ群と比較しての差が「0.50D/年以上または軸長変化0.18mm/年以上」を「強い効果」、「0.25D/年~0.50D/年または0.09mm/年~0.18mm/年」を「中程度の効果」、「0〜0.25D/年または0〜0.09mm/年」を「弱い効果」としたところ、高用量および中等量アトロピンのみが「強い効果」を示した。
【考察】
他の介入よりもアトロピンが有効であることが示唆されました。濃度による差はあまりないようです。
先ほどのメタ解析同様に試験数が少ないので、そこが残念ではあります。他の介入に関しても、アトロピンには劣るかもしれませんが、本文論文のFig3.にあるようにコントロール・プラセボよりは有効なものもあるようですので、それについてはまた個別の論文を読んでみないと何とも言えないかな、という印象です。
【全体を通して】
アトロピンの有効性が目立ったように思います。有害事象も含めて、もう少し詳しく調べてみたいと思いました。また、他の介入についても調べてみようと思います。
ちなみに、コクランにも種々の介入についてのメタ解析(Cochrane Database Syst Rev. 2011 Dec 7;(12):CD004916. PMID: 22161388)が出ておりましたが、2011年のものでやや古かったので今回は取り上げておりません。