ピオグリタゾンのことを色々とみていきます。
まずは、悪名高き(?)PROactive試験から。
Secondary prevention of macrovascular events in patients with type 2 diabetes in the PROactiveStudy (PROspective pioglitAzone Clinical Trial In macroVascular Events): a randomised controlled trial.
(PROactive試験における2型糖尿病患者の大血管イベントの2次予防:RCT)
Lancet. 2005 Oct 8;366(9493):1279-89.
PMID: 16214598
【PECO】
P:HbA1c6.5以上の35-75歳(平均61.8歳)、5,638人、男性66%
登録基準:参加の6ヶ月以上前に心筋梗塞または脳卒中、登録の6か月以上前の経皮的冠動脈形成術または冠動脈バイパス手術、登録3か月以上前の急性冠動脈症候群、または脚の冠状動脈疾患または閉塞性動脈疾患の客観的証拠
E:ピオグリタゾン群2,605人(最初の1ヵ月は15mg,2ヵ月目は30mg,その後は45mg)
C:プラセボ群2,633人
O:総死亡、非致死的心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を含む)、脳卒中、急性冠動脈疾患、冠状動脈または脚動脈における血管内または外科的介入、および足首上の切断の複合アウトカム
【批判的吟味】
デザイン:RCT
主要2次アウトカム:総死亡、非致死的心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を除く)、脳卒中の複合
真のアウトカムか?:1次アウトカムは色々と混ざっている印象、真とは言い切れないかも…
盲検化はされているか?:されている
ITT解析はされているか?:されている
結果を覆すほど脱落者はいるか?:E群428人、C群439人:計867人(15.3%)
追跡期間:平均34.5か月
【結果】
1次アウトカム(総死亡、非致死的心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を含む)、脳卒中、急性冠動脈疾患、冠状動脈または脚動脈における血管内または外科的介入、および足首上の切断の複合)
E群 vs C群: 514人/2605人vs 572人/2633人(HR 0.90, 95%CI:0.80-1.02)
2次アウトカム(総死亡、非致死的心筋梗塞(無症候性心筋梗塞を除く)、脳卒中の複合)
E群 vs C群: 301人/2605人 vs 358人/2633人(HR 0.84, 95%CI:0.72-0.98)
その他のアウトカム(全てE群 vs C群)(インスリン導入率)
インスリン導入率:183人/2605人 vs 362人/2633人(HR 0.47, 95%CI:0.39-0.56)
HbA1cの変化:-0.8%(-1.6%-(-0.1%))、C群:-0.3%(-1.1%-0.4%)
全ての心不全:281人/2605人(10.8%) vs 198人/2633人(7.5%)(P<0.001)(NNH=30)
入院を必要とした心不全:149人/2605人(5.7%) vs 108人/2633人(4.1%)(P=0.007)(NNH=62)
心不全死:25人/2605人(1.0%) vs 22人/2633人(0.8%)(P=0.634)(NNH=500)
低血糖:726人/2605人(27.9%) vs 528人/2633人(20.1%)(NNH=12)
心不全を伴わない浮腫:562人/2605人(21.6%) vs 341人/2633人(13.0%)(NNH=11)
【考察】
1次アウトカムの複合がなんかよく分からないです…
で、2次アウトカムは有意差がついていますが、どうやら後付けされたようで…
有害事象に関しては、確実に心不全は増えそうですね。浮腫も多そうですし。
あと気になったのは、参加者に男性が多いという点です。アクトスの添付文書には、「本剤単独投与及びインスリンを除く他の糖尿病用薬との併用投与:男性3.9%(26/665例)、女性11.2%(72/643例)、インスリン併用投与:男性13.6%(3/22例)、女性28.9%(11/38例)」という記載があり、明らかに女性の方の有害事象が多いのですが、参加者に女性が少ないというのは、何かを疑いたくなってしまいます。
心不全にも性差はあるんですかね??
てことで、この試験をどう評価してよいのかよく分かりません。副作用が多いというのはよく分かりました。
次は、有害事象の1つとして知られている骨折のリスクについて。
アブストラクトのみしか読めませんでしたが。
Risk of fracture with thiazolidinediones: an updated meta-analysis of randomized clinical trials.
(チアゾリジン系薬(TZDs)による骨折リスク:アップデートされたRCTのメタ解析)
Bone. 2014 Nov;68:115-23.
PMID: 25173606
【PECO】
P:896の骨折症例のある22のRCTの24,544人の患者
E:ピオグリタゾン群
C:プラセボ群
O:骨折リスク(性別、ロシグリタゾンとピオグリタゾンによる差異、60歳以上と未満による差異、暴露期間による差異)
デザイン:RCTのメタ解析
【結果】
性別の骨折リスク
・男性:OR 1.02; 95%CI: 0.83-1.27
・女性:OR 1.94; 95%CI: 1.60-2.35
ロシグリタゾンとピオグリタゾンによる骨折リスクの差異
・ロシグリタゾン:OR 2.01; 95%CI: 1.61-2.51
・ピオグリタゾン:OR 1.73; 95%CI: 1.18-2.55
60歳以上と未満による差異
・60歳以上:OR 2.07; 95%CI: 1.51-2.36
・60歳未満:OR 1.89; 95%CI: 1.51-2.36
暴露期間による差異
・有意差なし
【考察】
特に女性において骨折リスクは大きく上昇しております。それ以外では群間で差はなかったようです。絶対差が分からないので、そこの判断が難しいですが、骨折リスクが倍になるというのは大きいように思います。
浮腫も含めると、女性には使いにくいですね。
最後に、何かと注目されているNASHへの効果について
Long-Term Pioglitazone Treatment for Patients With Nonalcoholic Steatohepatitis and Prediabetes or Type 2 Diabetes Mellitus: A Randomized Trial.
(前糖尿病および2型糖尿病の非アルコール性脂肪肝炎(NSAH)患者への長期間のピオグリタゾンでの治療:ランダム化試験)
Ann Intern Med. 2016 Sep 6;165(5):305-15.
PMID: 27322798
【PECO】
P:前糖尿病またはT2DMかつ生検で証明され、低カロリー食(体重を維持するために必要なエネルギーより500キロカロリー減らした量)を処方されたNASH患者101名
E:ピオグリタゾン45mg群50人(平均年齢52歳、男性36%)
C:プラセボ群51人(平均年齢49歳、男性35%)
O:線維症が悪化することなく非アルコール性脂肪性肝疾患活動性スコア(NAS)の2つのカテゴリーで2ポイント以上の低下(改善)
【批判的吟味】
デザイン:ランダム化2重盲検プラセボ対象試験(18ヵ月後以降は両群ピオグリタゾン投与のオープンラベル試験)
2次アウトカム:他の組織学的転帰、磁気共鳴およびプロトン分光法によって測定された肝臓トリグリセリド含量、代謝パラメータ
真のアウトカムか?:代用のアウトカム
ITT解析されているか?:不明
追跡率:18ヵ月後までに両群9人の脱落(副作用に膀胱癌のリスクが発表されたため)、プラセボ群1例の肝機能値上昇による脱落→82/101(81%)、18ヵ月後から36ヵ月後までに同膀胱癌のリスクにて両群4人ずつ脱落→74/101(73%)
Limitation:単施設試験
1次アウトカム(線維症が悪化することなく非アルコール性脂肪性肝疾患活動性スコア(NAS)の2つのカテゴリーで2ポイント以上の低下(改善))
E群 vs C群:58% vs 17%(治療差 41%;95%CI:23-59%)
2次アウトカム(NASHの解消)
E群 vs C群:51% vs 19%(治療差 32%;95%CI:13-51%)
2次アウトカム(有害事象;体重増加)
E群 vs C群:+2.5kg(18ヶ月)
※有害事象の総発生率は両群で差はなかった。
【考察】
アブストラクトのみしか読めなかったので、
日経メディカルの記事:http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/etc/201607/547581.html
を少し参考にしております。
それぞれの数値の意味をあまり理解できていないのですが、それぞれのアウトカムで大きな差が出ており、それなりに効きそうな印象です。
症例数が少ないので、これから規模の大きな試験が期待されます。