今回は、「ALLHAT」「EUROPA」「CAMELOT」の3つの論文を紹介していきます。
まずは「ALLHAT」試験から。
Major outcomes in high-risk hypertensive patients randomized to angiotensin-converting enzyme inhibitor or calcium channel blocker vs diuretic: The Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial (ALLHAT).
JAMA. 2002 Dec 18;288(23):2981-97.
PMID: 12479763
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2000130.html
【PECO】
P: 623の北アメリカの施設の最低1つの冠動脈性心疾患(CHD)リスク因子のある高血圧の55歳以上の33,357人
E:アムロジピン2.5mg-10mg(n=9,048)、リシノプリル10mg-40mg(n=9,054)
C:クロルタリドン12.5mg-25mg(n=15,255)
O:致死的CHDまたは非致死的心筋梗塞
デザイン:2重盲検RCT(セカンドラインはオープンラベル)
平均年齢:67歳
追跡期間:平均4.9年
アブストラクトのみ or 全文:全文
【結果】
クロルタリドン群 |
アムロジピン群 |
リシノプリル群 |
アムロ vs クロル |
リシノ vs クロル |
|
6年間発生率 |
相対リスク比(95%CI) |
||||
主要アウトカム(Oに記載) |
11.5% |
11.3% |
11.4% |
0.98 (0.90-1.07) |
0.99 (0.91-1.08) |
総死亡 |
17.3% |
16.8% |
17.2% |
0.96 (0.89-1.02) |
1.00 (0.94-1.08) |
脳卒中 |
5.6% |
5.4% |
6.3% |
1.04 (0.99-1.09) |
1.10 (1.05-1.16) |
心不全 |
0.3% |
0.4% |
0.4% |
1.38 (1.25-1.52) |
1.19 (1.07-1.31) |
有害事象 |
クロルタリドン群 |
アムロジピン群 |
リシノプリル群 |
アムロ vs クロル |
リシノ vs クロル |
6年間の発生率 |
P値 |
||||
K<3.5mEq/L |
8.5% |
1.9% |
0.8% |
<0.001 |
<0.001 |
新規食前血糖値≧126mg/dL |
11.6% |
9.8% |
8.1% |
0.04 |
<0.001 |
血管浮腫 |
0.1% |
<0.1% |
0.4% |
有意差なし |
<0.001 |
※140/90達成率はクロルタリドン群、アムロジピン群、リシノプリル群にてそれぞれ、1年後:57.8% vs 55.2% vs 50.6%、4年後:67.1% vs 65.8% vs 63.1%
【感想】
ハードエンドポイントで有意差がついているものもありますが、6年間での絶対差は大きくない印象です。有効性で利尿剤、Ca拮抗薬、ACEIに差がないとなると、どの有害事象を優先して考えるかということが重要かもしれません。
つぎは「EUROPA」試験。
Efficacy of perindopril in reduction of cardiovascular events among patients with stable coronary artery disease: randomised, double-blind, placebo-controlled, multicentre trial (the EUROPA study).
Lancet. 2003 Sep 6;362(9386):782-8.
PMID: 13678872
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c1999057.html
【PECO】
P:心不全のない冠動脈疾患患者(13,655人)
E:ペリンドプリル8mg群(n=6110)
C:プラセボ群(n=6108)
O:心血管死、心筋梗塞、または心停止からの蘇生の複合
デザイン:2重盲検RCT
平均年齢:60歳
追跡期間:平均4.2年
アブストラクトのみ or 全文:アブストラクトのみ
【結果】
主要アウトカム(心血管死、心筋梗塞、または心停止からの蘇生の複合)
E群 vs C群:8% vs 10%;相対リスク減少率(RRR) 20%(95%CI:9-29)
※本文より、1つの主要心血管イベント予防に必要な治療数(NNT)=50人/4年間
【感想】
リスクの比較的低い患者が対象だったこともあり、4年間で絶対差2%の減少”のみ”。ややインパクトが弱い気がします。また、循環器トライアルデータベースには、「サブ解析においてβ遮断薬併用群においてのみ有用性がみられ,単独では有用性がみられない」との記載があり、気になるところです。
最後は「CAMELOT」試験。
Effect of antihypertensive agents on cardiovascular events in patients with coronary disease and normal blood pressure: the CAMELOT study: a randomized control trial.
JAMA. 2004 Nov 10;292(18):2217-25.
PMID: 15536108
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2002303.html
【PECO】
P:血管造影で確認された冠動脈疾患(CAD)(冠動脈造影による狭窄> 20%)および拡張期血圧100mmHg未満の1991人
E:アムロジピン10mg(n=663)、エナラプリル20mg(n=673)
C:プラセボ(n=655)
O:心血管イベントの発生率(心血管死、非致死性心筋梗塞、心停止後蘇生、冠状動脈血行再建術、狭心症の入院、慢性心不全による入院、致死性または非致死性脳卒中または一過性虚血発作、ならびに末梢血管疾患の新たな診断)
デザイン:2重盲検RCT
平均年齢:57歳
追跡期間:試験期間2年
アブストラクトのみ or 全文:全文
Limitation:サンプルサイズが小さいこと。複合エンドポイントだったこと。
【結果】
アムロジピン群 |
プラセボ群 |
エナラプリル群 |
アムロ vs プラセボ |
アムロ vs エナラ |
エナラ vs プラセボ |
|
発生率(%) |
ハザード比(95%CI) |
|||||
主要アウトカム(Oに記載) |
16.6% |
23.1% |
20.2% |
0.69 (0.54-0.88) |
0.81 (0.63-1.04) |
0.85 (0.67-1.07) |
冠動脈再建術 |
7.8% |
15.7% |
14.1% |
0.73 (0.54-0.98) |
0.84 (0.62-1.13) |
0.86 (0.65-1.14) |
狭心症入院 |
7.7% |
12.8% |
12.8% |
0.58 (0.41-0.82) |
0.59 (0.42-0.84) |
0.98 (0.72-1.32) |
総死亡 |
1.1% |
0.9% |
1.2% |
1.14 (0.38-3.40) |
0.92 (0.33-2.53) |
1.26 (0.44-3.65) |
有害事象
・低血圧:アムロジピン群3.3%、プラセボ群3.2%、エナラプリル群9.5%
・末梢浮腫:32.4%(5.0%は脱落)、9.6%、9.5%
・咳:5.1%、5.8%、12.5%(3.9%脱落)
【感想】
この試験で驚いたのは、試験開始時の血圧が129/78という正常血圧であり、プラセボ群はそのベースラインとほとんど変わりなかったが、アムロジピン群およびエナラプリル群は124/75に下がった程度でした。それなのにこんなにきれいな差がついております。これは血圧を下げた効果なのか、薬剤の副次的な作用なのか、それとも…ちょっと疑いたくなってきます。2年間にしてはイベントが発生しすぎのような気も。脱落率がそれぞれの群で30%前後というのも気になるところです。
怪しんでばかりいても仕方ないので…
今回のようなハイリスク患者に対しては、可能な限りCa拮抗薬による治療が必要な気がします。
今回は以上になります。