有名な高血圧に関するRCTを簡単にまとめました。
全ての論文が全文をフリーで読めた訳ではなかったので、「循環器トライアルデータベース」の情報も参考にしてあります。
2群間比較
名称 (リンクは循環器トライアルデータベース) |
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citation |
JAMA. 1991 Jun 26;265(24):3255-64. |
Lancet. 2000 Jul 29;356(9227):366-72. |
Lancet. 2001 Sep 29;358(9287):1033-41. |
PMID |
2046107 | ||
介入群 |
クロルタリドン(+アテノロール) |
ニフェジピン |
ペリンドプリル(+インダパミド) |
対照群 |
プラセボ |
ヒドロクロロチアジド+アミロリド |
プラセボ |
平均年齢 ベースの平均血圧 |
72歳 170/72 |
65歳 173/99 |
- 147/86 |
対象者 |
60歳以上の高血圧患者 |
55〜80歳の高血圧患者 |
脳卒中または一過性虚血性発作の既往のある高血圧および非高血圧患者 |
国、対象人数 |
米国、4736人 |
欧州、6321人 |
アジア、オーストラリア、欧州6105人 |
追跡期間(平均or中央値) |
4.5年 |
4年 |
3.9年 |
2重盲検 or PROBE |
2重盲検 |
2重盲検 |
2重盲検 |
主要アウトカム |
致死的及び非致死的脳卒中(RR 0.68) |
心血管死、心筋梗塞、心不全、または脳卒中の複合(有意差なし) |
脳卒中(致死性or致死性) (相対リスク減少率 28%) |
主な副次的アウトカムおよび有害事象 |
総死亡(RR 0.87) |
末梢浮腫(28% vs 4.3%) DM(3.0% vs 4.3%) 高尿酸血症(1.3% vs 6.4%) |
主要血管イベント(相対リスク減少率 26%) |
Lancet. 2003 Sep 6;362(9386):782-8. |
Hypertens Res. 2004 Mar;27(3):181-91. |
Lancet. 2004 Jun 19;363(9426):2022-31. |
Lancet. 2005 Sep 10-16;366(9489):895-906. |
ペリンドプリル |
nifedipine徐放錠 |
バルサルタン(+HCTZ) |
アムロジピン(+ペリンドプリル) |
プラセボ |
ACEI(エナラプリル、イミダプリル、リシノプリル) |
アムロジピン(+HCTZ) |
アテノロール(ベンドロフルメチアジド) |
60歳 ー |
65歳 146/82 |
67歳 154/87 |
63歳 164/94 |
臨床上心不全のない冠動脈心疾患患者 |
75歳以下の高血圧及び冠動脈疾患患者 |
50歳以上の高リスクの本態性高血圧患者 |
40〜79歳で少なくとも3つの他の心血管危険因子のある高血圧症患者 |
欧州、12218人 |
日本、1650人 |
31か国、15245人 |
北欧・イギリス、19257人 |
4.2年 |
3年 |
4.2年 |
5.5年 |
2重盲検 |
PROBE |
2重盲検 |
PROBE |
心血管死、心筋梗塞、心停止からの蘇生の複合(相対リスク減少率20%) |
心血管死、突然死、心筋梗塞、狭心症・心不全入院、重篤な不整脈、冠動脈介入の複合(有意差なし) |
枠外に記載※1 有意差なし |
非致死的心筋梗塞および致死的CHD(有意差なし) |
特記すべき事項なし |
低血圧(1.0% vs 0.2%) 浮腫(0.8% vs 0%) 空咳(0% vs 7.3%) |
心筋梗塞(HR 1.19) DM新規発症(HR 0.77) 末梢浮腫(14.9% vs 32.9%) |
致死的および非致死的な脳卒中(HR 0.77) 総死亡(HR 0.89) DM新規発症(HR 0.70) |
※1 突然の心臓死、致命的な心筋梗塞、経皮的冠動脈インターベンションまたは冠状動脈バイパス移植術中またはその後の死亡、心不全死、剖検での最近の心筋梗塞に伴う死亡、入院が必要な心不全、致命的でない心筋梗塞または心筋梗塞を予防するための緊急処置の複合
Lancet. 2007 Sep 8;370(9590):829-40. |
Hypertension. 2008 Feb;51(2):393-8. |
N Engl J Med. 2008 Dec 4;359(23):2417-28. |
N Engl J Med. 2008 May 1;358(18):1887-98. |
ペリンドプリル+インダパミド |
カンデサルタン |
ベナゼプリル+アムロジピン |
インダパミド(+ペリンドプリル) |
プラセボ |
アムロジピン |
ベナゼプリル+ヒドロクロロチアジド |
プラセボ |
66歳 145/81 |
63歳 163/92 |
68歳 145/80 |
83.6歳 173/90.8 |
55歳以上の2型DM患者 |
危険因子のうち1つ以上を有する高血圧患者 |
60歳以上の収縮期血圧≧160あるいは降圧薬治療例で,心血管・腎疾患・標的臓器障害を1つ以上有する又は55~59歳で上記2疾患以上を有する患者 |
80歳以上で収縮期血圧160mmHg以上 |
20か国、11140人 |
日本、15,175人・年 |
米国・北欧、11506人 |
欧州・中国・オーストラリア・チュニジア、3845人 |
4.3年 |
3.2年 |
3年 |
1.8年 |
2重盲検 |
PROBE |
2重盲検 |
2重盲検 |
枠外に記載※2 HR 0.91 |
枠外に記載※3 有意差なし |
枠外に記載※4 HR 0.80 |
致死的および非致死的脳卒中(有意差なし) |
大血管障害、微小血管障害(有意差なし) 心血管死(HR 0.82) 総死亡(HR0.86) |
DM新規発症(HR 0.64) |
めまい(20.7% vs 25.4%) 末梢浮腫(31.2% vs 13.4%) |
総死亡(HR 0.79) 心不全(HR 0.36) |
※2 心血管疾患による死亡、非致死性脳卒中または非致死性心筋梗塞、新規または悪化している腎臓または糖尿病性眼疾患として定義される主要な大血管および微小血管事象の複合
※3 突然死(急性発症で24時間以内の内因死)、脳卒中、TIA、心不全、狭心症、急性心筋梗塞、腎イベント、解離性大動脈瘤、末梢動脈の動脈硬化性閉塞の複合
※4 心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、狭心症入院、突然の心停止後の蘇生、冠動脈血行再建術の複合
Eur Heart J. 2009 May;30(10):1203-12. |
Am J Med. 2012 Oct;125(10):981-90. |
N Engl J Med. 2015 Nov 26;373(22):2103-16. |
カンデサルタン |
オルメサルタン40mg |
収縮期血圧の目標値120未満 |
ACEIを含む非ARB |
オルメサルタン20mg+カルシム拮抗薬 |
収縮期血圧の目標値140未満 |
65歳 135/76 |
73.6歳 158/85 |
67.9歳 140/78 |
高血圧のある血管造影にて診断された冠状動脈疾患 |
65歳以上で2型糖尿病または心血管疾患のある高血圧患者 |
収縮期血圧130~180の75歳以上または50歳以上・収縮期血圧130~180かつCVDリスク因子1つ以上 |
日本、2049人 |
日本、1164人 |
米国・プエルトリコ、9,361人 |
4.2年 |
3年 |
3.26年 |
PROBE |
PROBE |
PROBE |
心血管死、非致死性心筋梗塞、心不全、不安定狭心症、脳梗塞、その他心血管イベントによる入院の複合(有意差なし) |
心血管イベントおよび非心血管死(有意差なし) |
心筋梗塞,その他の急性冠症候群,脳卒中,心不全,心血管系の原因による死亡の複合(HR 0.75) |
DM新規発症(HR0.37) |
特記すべき事項なし |
心血管死(HR 0.57) 総死亡(HR 0.73) |
※5 心血管死、非致死性心筋梗塞、冠状動脈血行再建術、狭心症・慢性心不全による入院、致死性または非致死性脳卒中または一過性虚血発作の複合
※6 突然死、致死的・非致死的脳卒中、致死的・非致死的心筋梗塞(MI)、不安定狭心症による入院、NYHA心機能分類II~IV度の心不全、末梢動脈疾患の新規発症・増悪、腎イベント
3群間比較
JAMA. 2002 Dec 18;288(23):2981-97. |
JAMA. 2004 Nov 10;292(18):2217-25. |
N Engl J Med. 2008 Apr 10;358(15):1547-59. |
J Hypertens. 2011 Aug;29(8):1649-59. |
A群:アムロジピン B群:リシノプリル |
A群:アムロジピン B群:エナラプリル |
A群:テルミサルタン B群:両剤 |
A群:ベニジピン+ARB B群:ベニジピン+β遮断薬 C群:ベニジピン+サイアザイド系利尿薬 |
クロルタリドン |
プラセボ |
ラミプリル |
|
67歳 146/84 |
57歳 129/78 |
66歳 141/82 |
63歳 153/89 |
1つ以上のCHDリスク因子のある55歳以上の高血圧患者 |
CAD(冠動脈造影による狭窄> 20%)および拡張期血圧100mmHg未満 |
55歳以上の冠動脈疾患、心血管疾患、ハイリスクDM患者 |
40-85歳でベニジピン4mg/日にて (140/90)を達成していない高血圧患者 |
米国、33357人 |
北米・欧州、1991人 |
40か国、25620人 |
日本、3501人 |
4.9年 |
2年 |
3年 |
3.6年 |
2重盲検(セカンドラインはオープンラベル) |
2重盲検 |
2重盲検 |
PROBE |
致死的CHDまたは非致死的心筋梗塞 A群vs対照群(有意差なし) B群vs対照群(有意差なし) |
枠外に記載※5 A群vs対照群(HR 0.69) B群vs対照群(有意差なし) |
心血管死、心筋梗塞、脳卒中、心不全入院の複合 A群vs対照群(有意差なし) B群vs対照群(有意差なし) |
枠外に記載※6 A群vsC群(有意差なし) B群vsC群(有意差なし) A群vsB群(有意差なし) |
〇低K血症 A群vs対照群(p<0.001) B群vs対照群(p<0.001) 〇食前血糖値≧126mg/dL A群vs対照群(p=0.04) B群vs対照群(p<0.001) 〇血管浮腫 A群vs対照群(有意差なし) B群vs対照群(p<0.001) |
〇狭心症入院 A群vs対照群(HR 0.58) B群vs対照群(有意差なし) A群vsB群(HR 0.59) 〇末梢浮腫 32.4%vs9.5%vs9.6% 〇咳 5.1%vs12.5%vs5.8% |
〇低血圧 A群vs対照群(RR 1.54) B群vs対照群(RR 2.75) 〇咳 A群vs対照群(RR 0.26) B群vs対照群(有意差なし) |
〇心血管死+非致死的MI+非致死的脳卒中 B群vsC群(HR 2.13) 〇致死的・非致死的脳卒中 B群vsC群(HR 2.31) 〇DM新規発症 B群vsA群(HR 1.85) |
【コメント】
今までしっかりと読んだことのない論文が多く、一度読んで自分なりに薬剤使い分けを考えることができればいいと思ったのですが、思いのほか混沌としている印象です。
・主要アウトカムの設定が複合過ぎてよく分からない。
・副作用については種類別で特徴が把握できた。
・PROBE法が用いられている試験は、なんだか怪しいものが多い。
・それぞれの薬剤の使い分けを理解するには単一のRCTだけでなく、メタ解析を読むことが必要かもしれない。
上記の表はザックリとしたまとめになったので、今後同ブログで詳細を紹介していきます。