前回紹介した論文18件を、これから3つずつ年代順に紹介していきます。
まず今回は「SHEP」「INSIGHT」「PROGURESS」を取り上げます。
一つ目は「SHEP」試験。
Prevention of stroke by antihypertensive drug treatment in older persons with isolated systolic hypertension. Final results of the Systolic Hypertension in the Elderly Program (SHEP). SHEP Cooperative Research Group.
JAMA. 1991 Jun 26;265(24):3255-64.
PMID: 2046107
循環器トライアルデータベース:http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c1999018.html
【PECO】
P:60歳以上の高血圧患者4736人(収縮期血圧の範囲は160-219mmHg(平均170mmHg)、拡張期血圧は90mmHg以下(平均77mmHg))
E:クロルタリドン12.5mg/日投与群(降圧が不十分な場合は25mg投与、それでも降圧不十分ならアテノロール25mgmg/日、さらに50mg/日を投与可能)(2365人)
C:プラセボ群(2371人)
O:致死的及び非致死的脳卒中
デザイン:2重盲検RCT
平均年齢:72歳
追跡期間:平均4.5年
アブストラクトのみ or 全文:アブストラクトのみ
【結果】
主要アウトカム(5年間の致死的及び非致死的脳卒中)
〇E群 vs C群:5.2% vs 8.2%;相対リスク(RR) 0.64(P=0.0003)
副次的アウトカム(全て有意差あり)
〇非致死性心筋梗塞(MI)および冠動脈死:RR 0.73
〇主要心血管疾患発症:RR 0.68(※本文より、5年で絶対差5.5%の減少)
〇全死亡:RR 0.87
※5年間の平均血圧:E群 143/68mmHg、C群 155/72mmHg
【感想】
クロルタリドン群にて有意にアウトカムの改善がみられましたが、主要アウトカムは絶対差として5年でわずか3%の減少です。本文より主要心血管疾患は絶対差として5年で5.5%の減少だったようです。RRが0.68なので、2/3くらいになっているのだと思います。この効果を大きいと捉えるのか小さいと捉えるのかは人それぞれだと思いますが…
次は「INSIGHT」試験。
Morbidity and mortality in patients randomised to double-blind treatment with a long-acting calcium-channel blocker or diuretic in the International Nifedipine GITS study: Intervention as a Goal in Hypertension Treatment (INSIGHT).
Lancet. 2000 Jul 29;356(9227):366-72.
PMID: 10972368
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c2000062.html
【PECO】
P:ヨーロッパおよびイスラエルの55〜80歳の高血圧症(血圧> 150/ 95mmHg以上、または収縮期血圧> 160mmHg以上)の患者6321人
E:ニフェジピン30mg(n=3157)
C:コアミロジド(ヒドロクロロチアジド25mg +アミロリド2.5mg、n=3164)
O:心血管死、心筋梗塞、心不全、または脳卒中の複合
デザイン:2重盲検RCT
平均年齢:65歳
追跡期間:平均4年
アブストラクトのみ or 全文:全文
【結果】
ニフェジピン群 |
利尿剤群 |
オッズ比(95%CI) |
|
主要アウトカム(Oに記載) |
6.3% |
5.8% |
1.11(0.90-1.36) |
心不全(非致死性) |
0.8% |
0.3% |
2.20(1.07-4.49) |
心不全(致死性) |
0.1% |
<0.1% |
2.01(0.18-22.1) |
総死亡 |
4.8% |
4.8% |
1.01(0.80-1.27) |
心血管死 |
1.9% |
1.6% |
1.16(0.80-1.69) |
狭心症 |
1.8% |
0.4% |
0.74(0.52-1.04) |
有害事象 |
ニフェジピン群 |
利尿剤群 |
P値 |
末梢浮腫 |
28% (脱落数:267例) |
4.3% (脱落数:14例) |
<0.0001 |
糖尿病 |
3.0% |
4.3% |
0.01 |
痛風 |
1.3% |
2.1% |
0.01 |
低カリウム血症 |
1.9% |
6.2% |
<0.0001 |
高尿酸血症 |
1.3% |
6.4% |
<0.0001 |
【感想】
主要アウトカムに差はありませんでしたが、副次的アウトカムや有害事象にはそれぞれの特徴がよく出ていると思います。そういった意味で、とても貴重な試験になっていると思います。
最後は「PROGURESS」試験。
Randomised trial of a perindopril-based blood-pressure-lowering regimen among 6,105 individuals with previous stroke or transient ischaemic attack.
Lancet. 2001 Sep 29;358(9287):1033-41.
PMID: 11589932
循環器トライアルデータベース→http://circ.ebm-library.jp/trial/doc/c1999059.html
【PECO】
P:脳卒中または一過性虚血性発作の既往のある高血圧および非高血圧患者
6105人
E:ぺリンドプリル(4mg/日)群(+インダパミド)(3051人)
C:プラセボ群(3054人)
O:すべての脳卒中(致死性or致死性)
デザイン:2重盲検RCT
平均年齢:?歳
追跡期間:平均3.9年
アブストラクトのみ or 全文:アブストラクトのみ
【結果】
主要アウトカム
〇E群 vs C群:10% vs 14%(相対リスク減少率(RRR) 28%(95%CI:17-38))
※ぺリンドプリルとインダパミドの併用療法は脳卒中リスクを43%(95%CI:30-54)減少させたが、ペリンドプリル単剤の治療は脳卒中のリスクを下げなかった。
副次的アウトカム
〇主要血管イベント :RRR 26%(95%CI:16-34)
【感想】
主要アウトカムの改善はSHEP試験と似ているので、こんなものなのかなと。
興味深いのは、ペリンドプリル単剤とインダパミド併用とで結果が異なったことです。より降圧した方が良かったのか、サイアザイド系利尿剤による副次的な効果なのか。どうでしょうか。
今回は以上になります。