抗菌薬への介入っていつまで続けていいのやら…と思い。
外来抗菌薬への介入と介入中止後の処方動向に関する論文を2つ紹介します。
いずれの研究も介入後の変化と介入中止後の変化がそれぞれ論文となっております。
まずは一つ目
〇介入後の変化
Effect of Behavioral Interventions on Inappropriate Antibiotic Prescribing Among Primary Care Practices: A Randomized Clinical Trial.
(プライマリケア診療における不適切な抗生物質処方に対する行動介入の影響)
JAMA. 2016 Feb 9;315(6):562-70.
PMID: 26864410
【PECO】
P:ボストンとロサンゼルスの47のプライマリケア診療所の248人の医師
E:①非抗生物質による治療を提案、②処方の正当性をカルテに記載、③処方率の最も低い医師との比較をメールにて送信、以上の3つの組み合わせ(それぞれ単独、2つ、3つの7種類)
C:介入なし
※抗生物質処方ガイドラインに関する教育は両群とも受けている
O:急性気道感染症の外来通院中の不適切な(ガイドラインと一致しない)抗生物質処方の割合の変化
デザイン:クラスターランダム化比較試験
脱落率:21/248(8.5%)
ITT解析されているか?:FAS
追跡期間:介入18か月前と介入18か月後
【結果】【抗菌薬の平均処方率】【介入時 vs 介入18か月目】
〇コントロール群
24.1%→13.1%(絶対差 -11.0%)
①非抗生物質による治療を提案
22.1%→6.1%(絶対差 -16.0%)(コントロール群の変化の差との差 -5.0%(95%CI -7.8% to 0.1%)
②処方の正当性をカルテに記載
23.2%→5.2%(絶対差 -18.1%)(コントロール群の変化の差との差 -7.0%(95%CI -9.1% to -2.9%)
③処方率の最も低い医師との比較をメールにて送信
19.9%→3.7%(絶対差 -16.3%)(コントロール群の変化の差との差 -5.2%(95%CI -6.9% to -1.6%)
※介入間に統計的に有意差はなし
〇介入中止後(12か月)の変化
Effects of Behavioral Interventions on Inappropriate Antibiotic Prescribing in Primary Care 12 Months After Stopping Interventions.
(介入中止12か月後のプライマリケア診療における不適切な抗生物質処方に対する行動介入の影響)
JAMA. 2017 Oct 10;318(14):1391-1392.
PMID: 29049577
【結果】【抗菌薬の平均処方率】【介入後18か月目 vs 介入中止後12か月目】
〇コントロール群
14.2%→11.8%(絶対差 -2.4%)
①非抗生物質による治療を提案
7.4%→8.8%(絶対差 1.4%)(コントロール群の変化の差との差 3.8%(95%CI:-10.3% to 17.9%)
②処方の正当性をカルテに記載
6.1%→10.2%(絶対差 4.1%)(コントロール群の変化の差との差 6.5%(95%CI:4.2% to 8.8%)
③処方率の最も低い医師との比較をメールにて送信
4.8%→6.3%(絶対差 1.5%)(コントロール群の変化の差との差 3.9%(95%CI:1.1% to 6.7%)
※介入後期間中、③はコントロールよりも低いままだった(P <.001)
※①,②は対照と変わらなかった
【感想】
種々の介入にて不適切な使用割合は減りましたが、介入が中止されると元に戻る結果に。③はまだ差がありますが、上昇傾向にあるので、いずれは一緒になる気もします。
でも、コントロール群の処方率は下がり続けているので、それは素晴らしいことかなと思います。
2つ目
〇介入後の変化
Effect of an outpatient antimicrobial stewardship intervention on broad-spectrum antibiotic prescribing by primary care pediatricians: a randomized trial.
(プライマリケア小児科医による広域抗菌薬処方に対する外来Antimicrobial stewardship(AS)介入の効果)
JAMA.2013 Jun 12;309(22):2345-52.
PMID: 23757082
【PECO】
P:ペンシルベニア州とニュージャージー州の25の小児科プライマリケア診療所のネットワークのうち18の診療所(170人の臨床医)
E: Antimicrobial stewardship(AS)(1時間の施設内での臨床医教育セッション(2010年6月)に続いて、1年間の個別化された四半期ごとの細菌およびウイルスARTIの処方または通常の実践の監査とフィードバック)
C:コントロール群
O:介入後1年間の細菌性急性気道感染症(ARTIs)の広域抗菌薬(ガイドライン外)処方やウイルス性ARTIsの抗菌薬処方の割合
デザイン:クラスターランダム化試験
ITT解析されているか?:FAS
脱落率:8/170(4.7%)
追跡期間:介入前20か月から介入後12か月
【結果】
主要アウトカム【ARTIsへの広域抗菌薬の処方率の変化の比較】
E群 vs C群:26.8%→14.3%(絶対差 12.5%) vs 28.4%→22.6%(絶対差 5.8%)(差の差[DOD] 6.7%; trajectoriesの差 P=0.01)
副次的アウトカム
〇肺炎
15.7%→4.2% vs 17.1%→16.3%(DOD 10.7%; P<0.001)
〇急性副鼻腔炎
38.9%→18.8% vs 40.0%→33.9%(DOD 14.0%; P=0.12)
〇 A群レンサ球菌咽頭炎
4.4%→3.4% vs 5.6%→3.5%(DOD -1.1%、P=0.82)
〇ウイルス感染
7.9%→7.7% vs 6.4%→4.5%(DOD -1.7%、P=0.93)
〇介入中止後(18か月)の変化
Durability of benefits of an outpatient antimicrobial stewardship intervention after discontinuation of audit and feedback.
JAMA. 2014 Dec 17;312(23):2569-70.
PMID: 25317759
【結果】【介入終了時と観察終了時の抗菌薬処方率の変化の比較】
16.7%→27.9% vs 25.4%→30.2%(差の差 −6.4%; trajectoriesの差 P = 0.02)
【感想】
こちらの論文でも介入を中止すれば処方率は上昇するという結果となりました。こちらはコントロール群も上昇しておりました。悩ましいですね。。。
【全体を通して】
いずれの論文でも介入を中止すれば処方率は上昇しておりました。介入期間の問題や介入方法の問題もあるのかもしれませんが、監視・介入を続けていくことが重要であることを示しているような気がします。人間ですから、どうしても介入等がないと甘くなっちゃいますからね。それは仕方のないことなのかもしれません。
介入を中止するのは容易ではなさそうです。粘り強く取り組みを続けていきましょう。